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MotoGP ニュース

投稿日: 2020.11.24 08:25
更新日: 2020.11.27 20:37

【レースフォーカス】表彰台に立った3人のインディペンデントライダー。最終戦リタイアのミルを襲ったトラブル/MotoGP第15戦

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MotoGP | 【レースフォーカス】表彰台に立った3人のインディペンデントライダー。最終戦リタイアのミルを襲ったトラブル/MotoGP第15戦

 ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで2020年シーズンのMotoGPは幕を下ろした。今回は最終戦で表彰台に立ったトップ3ライダー、リタイアに終わったスズキのジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)の2020年シーズン、そしてMoto3クラスでタイトル争いを演じた小椋藍(Honda Team Asia)に迫っていこう。

■表彰台に立った3人のインディペンデントチームライダー

 まずは最終戦ポルトガルGPで表彰台を獲得した3人のライダーから。ミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)が優勝、2位をジャック・ミラー(プラマック・レーシング)、3位をフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)が獲得し、インディペンデントチームのライダーが表彰台を独占した。今季は実に9人ものウイナーが誕生し、さらに14戦中8戦でインディペンデントチームのライダーが優勝を飾っているシーズンだった。これまでの強さの定石とは違ったシーズンを象徴するような表彰台の顔ぶれだったと言える。

 優勝したポルトガル人ライダーのオリベイラにとっては母国グランプリ。アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベはアップダウンが激しく、ブラインドコーナーも多い。攻略が難しいコースだと言われている。2年前に現地を訪れた際の記憶を引っ張り出してみると、メインスタンドからは丘の上の11コーナーから急激に下って12コーナーに入るのが正面に見え、その眺めにメインストレートからの高低差を感じることができる。

 10月上旬にはこのサーキットでテストが行われたが、MotoGPマシンによる走行ではなかった。MotoGP初開催のサーキットで、ライダーたちは初日からリヤやフロントを浮かせながらマシンを走らせ、特にフロントタイヤを路面に接地させることに腐心しているようだった。

 オリベイラはそのポルトガルGPで、予選で最高峰クラス初のポールポジションを獲得。決勝レースではスタートから他を寄せつけず、ポール・トゥ・ウインを飾った。そのペースは圧巻で、2周目を終えて2番手を走っていたモルビデリに対し、1秒以上の差を築いていた。2番手を走行していたモルビデリはオリベイラの速さに「2周の間、後ろについて走って、彼がこの週末の、そして今日のベストライダーだとわかったよ」と、決勝後の会見で述べた。まさに他の追随を許さぬ速さだった。

 ただし、母国グランプリとは言え、それが過剰に有利に働いたわけではない、というのがトップ3の見解である。

ミゲール・オリベイラ、ジャック・ミラー、フランコ・モルビデリ
ミゲール・オリベイラ、ジャック・ミラー、フランコ・モルビデリ

 オリベイラは「僕がこのサーキットについて違った知識を持っていること、特に風のなかでのライディングを知っていることについては同意するよ」としながらも、「でも、どのくらいアドバンテージがあったのかはなんとも言えない。金曜日にはみんないつもよりも長いプラクティスを行ったわけだし、スーパーバイクとは乗り方がまったく違うんだ。経験豊富なライダーが後方でフィニッシュして、まったくサーキットを知らないライダーが前でフィニッシュした。つまり、通常のグランプリだったということだよ。誰が勝つのか、勝たないのかという点ではね」と言う。

 2位のミラーは同地でのレースは初めてだったそうだが、「もちろん、サーキットを知っていることは役に立つよ。でも、ミゲールが言ったように、ここでレースをしたことがあるライダーがいるけれど、僕はまったくその経験がなかったわけだからね」と同意。

 モルビデリはミサノ・サーキットでの過去の経験をコメントに交えた。「僕はミサノでR1に乗って、それからMotoGPバイクで走ったことがあるけれど、それはまったくの別ものだったよ。まったく違う世界だった。彼は2016年にここでレースをして、僕もそれを見ていた。ここでほかのバイクで走ったかどうかは知らない。ただ、ストックバイクなどで走ったとしても、それはMotoGPバイクとはまったく違うバイクということだ」

「同じサーキットで、スーパーバイクで走ったとしても、MotoGPとは違うスポーツだし、やり方も違う。まったく新たに合わせていき、自分をリセットしていかないといけない。ミゲールは今週、とても素晴らしい仕事をした。バイクをうまくセットアップしたんだ。彼がサーキットを知っているというのはそんなに重要ではなかったと思う。今日、彼は最強だった」

 オリベイラがこの日のベストライダーとして圧倒的な優勝を飾ったことを裏付けるものであるとともに、オリベイラとモルビデリのコメントは、MotoGPマシンを未経験のサーキットで走らせることがとても難しいものだということをうかがわせ、また、たった3日間で順応するライダーについても、脱帽すべきだとあらためて感じられるものだった。なにしろ、コースに慣れながらバイクのセッティングを模索し、フロント、リヤそれぞれ4タイプからのタイヤ選択──今大会では前後のハードタイヤにシンメトリー、アシンメトリーの2種類のタイヤが用意された──を行っていたのだ。初日2回のフリー走行は70分と長めに設定されたとはいえ、ハードな週末だったに違いない。

 さて、ポルトガルGPの結果により、コンストラクターズタイトルが確定した。この最終戦ではスズキのコンストラクターズタイトルがかかっており、3冠なるかと注目されていたのだが。ミラーが2位を獲得し、一方、スズキはミルがリタイア、アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が15位となったことで、コンストラクターズタイトルはドゥカティが獲得。スズキはタイトルを逃し、3位となった。

 前戦でチャンピオンを獲得したミルは、予選ではまさかの20番グリッド。予選日は電子制御に問題を抱えていたということだ。そして決勝レースでは、1周目3コーナーでフランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)と接触。このとき、ミルのマシンの左側とバニャイアの右腕が当たったという。バニャイアはその後、リタイアした。

 さらにその後、ミルは同じコーナーでヨハン・ザルコ(エスポンソラーマ・レーシング)と接触し、大きくポジションを落とすと、16周目にピットに戻りリタイア。予選の電子制御のトラブルは解決したものの、決勝レースでは別の問題が発生していた。

 ミルは「ペッコ(フランセスコ・バニャイア)には謝らないといけない。ちょっとアグレッシブすぎた」と反省を述べ、それから「ザルコがフロントに当たったからなのか、ペッコとの接触なのか、影響がどちらによるものだったのかわからないのだけど、それからトラクションコントロールがなくなった。トラクションがあるところとないところがあり、とても危険だった。タイヤが消耗していくと、どんどん悪くなっていった。それでリタイアしないといけなかった」とリタイアの理由を説明した。ミルには少々ほろ苦い、2020年シーズンの最終戦となった。

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