マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)がセンセーショナルな復活優勝を飾ったMotoGP第8戦ドイツGP。ここでは、マルケスの優勝とはまた別の視点からドイツGPを切り取っていきたい。ピックアップしたいのは、3戦連続で表彰台を獲得したミゲール・オリベイラ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)、現在チャンピオンシップでポイントリーダーにつけるファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)。
それから、アプリリアに21年ぶりのフロントロウをもたらしたアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)である。
■KTMのオリベイラが3戦連続の表彰台
KTMのオリベイラは、マルケスに次ぐ2位表彰台を獲得した。予選では、終盤に他ライダーの転倒によるイエローフラッグ提示でタイム更新ができずに6番グリッドに終わる。ただ、オリベイラの速さ、ペースのよさは疑いようがないものだった。レースシミュレーションが行われるフリー走行4回目では、20周以上を走ったハードのフロントタイヤでコンスタントに1分21秒後半のタイムをマークしていた。このとき、同じような状況で同じように1分21秒後半のタイムを記録していたのがマルケスだった。
オリベイラは6番グリッドからスタートし、序盤は5番手付近を走っていた。ただ、序盤に落ちた雨粒は、オリベイラがマルケスを追い上げるのを阻んだ。「マルクはすぐに(路面)グリップのレベルを理解して、(後方との)ギャップを築いた。そのとき彼のすぐ後ろにいなかったから、僕としては理想的な状況ではなかった。僕が集団のなかにいる間に、マルクは差を広げていた」と、オリベイラはキーポイントとなった状況を振り返った。
11周目に2番手に浮上したオリベイラは、好ペースでマルケスを追った。ただ、約2秒先のトップをひた走るマルケスもまた、オリベイラと同じようなペースで走り続け、差が詰まらない。そしてレース終盤、オリベイラはこのレースでは2位を獲得することに目標を定め、それを完遂したのだった。オリベイラにとって、第6戦イタリアGPの3位、第7戦カタルーニャGPでの優勝に続く3戦連続の表彰台獲得となった。
KTMは、明らかに2021年シーズン序盤に苦しんでいたが、ここ数戦で好転を見せている。オリベイラは決勝レース後の会見で「シーズン序盤は確かにきつい時期だった。でもそのきつい時期がなければ、今のこの状況にはいなかっただろう」と語った。
チームメイトのブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)も、決勝レース後の取材のなかで、同じように「シーズン序盤の、あの厳しい時間があったから、今の僕たちがあるのだと思うよ」とコメントしていた。ビンダーはといえば、表彰台には届かなかったが、13位番グリッドから4位でフィニッシュを果たしている。クラス参戦2年目のビンダーにとっては、MotoGPクラスでのドイツGP初レースだったことも少なからず影響していただろう。2020年シーズンは、新型コロナウイルス感染症の影響でドイツGPが開催されなかったからだ。
オリベイラの話に戻ろう。KTMとオリベイラは第6戦イタリアGPからKTMは新しいフレームを投入し、大きく飛躍した。そして、ドイツGPでもその感触は悪くないと述べていた。しかし、オリベイラによればこうした要因が好成績に結びついたすべてではないという。背景にあるのは、前述した「シーズン序盤のきつい時期」の時間だ。
「すべてのグランプリで、フリー走行などでは僕たちは強さを示していた。(シーズン序盤は)レースを完走できなかったりしたものだから、ムジェロ(第6戦イタリアGP)から調子を上げたような錯覚に陥るけど、そうじゃないんだ。僕たちは影でずっと作業を行っていた。だからこそ、ムジェロに持ち込んだものすべてが流れを変えたものだと感じられるのかもしれない。確かに、それ(新フレーム)は役立った。でも、それがすべてじゃない」
そして、それはKTMが一丸となって取り組んできた結果なのだとも言う。
「僕たちは、グループですごくいい仕事をしたと思うんだ。(KTMの)4人のライダーで取り組み、そしてテストチームのダニ(・ペドロサ)は第三者的立場にいるようだけれど、すごく貢献してくれた。このプロジェクト全体に、とても貴重な情報を提供してくれたんだ」
KTMの進化は疑いようがない。2021年シーズン残りのレースで、安定した成績を収められるか、それがまた一つのポイントとなるだろう。