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MotoGP ニュース

投稿日: 2021.08.17 08:00
更新日: 2021.08.17 08:15

【レースフォーカス】残り3周の分岐点で、ビンダーが下したスリックタイヤで走る決断/MotoGP第11戦オーストリアGP

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MotoGP | 【レースフォーカス】残り3周の分岐点で、ビンダーが下したスリックタイヤで走る決断/MotoGP第11戦オーストリアGP

 MotoGP第11戦オーストリアGPは、雨が波乱を生んだ。濡れた路面に、バイクを乗り替えるためピットインするライダーたち。そのなかで、ブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)はスリックタイヤで走り続けることを決めた。その決断は、ビンダーに優勝をもたらした。
 
 前週のスティリアGPに続き、オーストリアGPはレッドブルリンクで開催された。2021年シーズンのなかでは開幕戦カタールGP、第2戦ドーハGP以来の、2週連戦、同サーキットでの開催である。レッドブルリンクは山間部にあり、天候が変わりやすい。オーストリアGPの週末は初日の午後に雨が降ったが、予選日である土曜日はドライコンディション。決勝日である日曜日も、Moto3クラス、Moto2クラスの決勝レースはドライコンディションで行われていた。
 
 しかし、MotoGPクラスの決勝レースが始まるころ、天候が変わっていく。スタート直前、グリッド上に並んだジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)のヘルメットのシールドに、わずかな雨粒が落ちていたのが確認できる。スタート時にはすべてのマシンにはスリックタイヤが装着されていたが、各ピット前にはフラッグ・トゥ・フラッグに備えてバイクが並んでいた。MotoGPクラスの決勝レースでは、レース中に白旗が提示された場合、スリックタイヤを履いたバイクからレインタイヤを履いたバイクに、またはレインタイヤを履いたバイクから、スリックタイヤを履いたバイクに乗り替えをすることが可能となるルールがあり、『フラッグ・トゥ・フラッグ』と呼ばれている。
 
 レースがスタートして間もなく、白旗が提示。しかしライダーたちはバイク乗り替えのためにピットインすることなく、レースが進んでいった。状況が変わったのは全28周のレースのうち、残り周回数が5周となったところである。雨によって路面のコンディションが変わっていったのだ。
 
 このときいち早くバイクの乗り替えを決断したのがジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)とアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)で、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)を先頭とするトップ集団はコース上にとどまっていた。
 
 しかし、さらに雨量は増していった。セクター3を通過していたとき、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)とジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が、右手を上げて状況をアピールしている。このとき、10番グリッドからスタートしたビンダーは、トップ集団の後方である6番手、5番手あたりを走行していた。
 
 転機は残り4周を終えるころに訪れた。ビンダーを除くトップ集団の5人のライダー、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)、ホルヘ・マルティン(プラマック・レーシング)、クアルタラロ、ミルがピットに向かい、バイクの乗り替えを選択したのである。
 
 フラッグ・トゥ・フラッグのピットインのタイミングは、状況はもちろんのこと、ポジションを争っているライダーの動きを探る。後方のライダーたちは先頭のマルク・マルケスの出方を見ていたはずだ。事実、バニャイアは「マルクがどうするのか見てみようと思って、彼を前に行かせたんだ。そして彼がバイクを乗り替えるためにピットに入ったので、僕もそれにならった」と語っている。

 このとき先頭集団を走っていたのは、マルク・マルケスを除き、MotoGPクラス参戦3年目までのライダーだった。前回フラッグ・トゥ・フラッグが適用されたレースは、2021年第5戦フランスGP。さらにその前となると、2017年のチェコGPにまでさかのぼる。経験のあるマルク・マルケスの動きを参考にしようというバニャイアの作戦もうなずける。
 
 しかし、ビンダーはスリックタイヤで残り3周を走り切ることを決断した。ビンダーは「みんながピットに向かったのを見て、賭けに出るチャンスだと思ったんだ」と、このときの心境を説明する。

■脳裏をよぎった弟ダリン・ビンダーとの会話


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