マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)がサーキット・オブ・ジ・アメリカズで7度目の優勝を飾り、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)がチャンピオンシップのポイント差を拡大したMotoGP第15戦アメリカズGPだが、ここでは少し異なるトピックスに触れていくことにする。ジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)とジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)との間に起こったアクシデント、それから中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)の転倒についてだ。
■最終ラップのミラー&ミルの接触
決勝レース後、クールダウンラップでバイクを止めたミラーとミルが、何事かを話している様子が映像に映し出されていた。謝罪を意味するような仕草をとるミルに対し、ミラーは激昂していた。
彼らのこのアクションは、決勝レース中の最終ラップに起こったアクシデントが原因だった。映像を確認すると、最終ラップの15コーナーで6番手を走っていたミラーに7番手のミルがブレーキングでオーバーテイクを仕掛け、そこで接触した。二人は転倒しなかったものの、すぐ後方を走っていたエネア・バスティアニーニ(アビンティア・エスポンソラーマ)にかわされてポジションを落とし、ミルが7番手、ミラーが8番手でフィニッシュラインを通過した。しかしレース後、ミルに対して1ポジション降格のペナルティが科され、その結果、ミラーが7位、ミルが8位の結果となっている。
ミラーとミルの間には過去、第2戦ドーハGPで接触するアクシデントが起きている。このときは双方にペナルティが科されることはなかった。ただ、ミラーの怒りの背景には、ドーハGPや今回ばかりではなくこれまでの蓄積があったらしい。レース後の取材の中で、次のように語っている。
「最終ラップに何が起こったかというと、ミサノ(第14戦サンマリノGP)と同じだよ。またしても接触して(後ろのライダーに)抜かれた。それがすべてだ。レースディレクションが下したこと(ペナルティ)だから、語ることはあまりない。ただ、繰り返されているアクシデントだ。いずれにせよ、僕は何も変えることはできなかった」
ミラーが語る「ミサノと同じ」というのは、ミラー、ミル、マルケスが三つどもえの4番手争いを展開していた最終ラップのことを指しているものだと思われる。ミラーは最終ラップで4番手を走っていたのだが、14コーナーでミルがオーバーテイクを仕掛け、互いにラインがワイドになった。そのすきを突いたマルケスが4位でチェッカーを受けた。確かに、今回と似たような展開だ。
「これが初めてじゃないんだ。ミサノでも、それからアッセン(第9戦オランダGP)でも。数え出したらきりがない。でもまあ、僕は自分がすべきことを続けるだけだ」
一方のミルは、レース後のリアクション同様に、取材の中でもミラーへの謝罪の意を述べつつ、ペナルティについては疑問を呈している。
「まず最初にミラーに謝りたい。オーバーテイクで接触するのが好きなわけじゃないからね。僕は加速の部分でとても苦戦していて、(ミラーを)オーバーテイクできなかった。でも、彼は僕よりも遅かった。僕はセクター1のシケインではとてもうまく走れて、彼をオーバーテイクできた。けれどストレートで彼が僕をパスし、コンマ数秒の差をつけられてしまったんだ」
「彼はコーナーのインサイドにほとんどストレートで入っていった。少しおかしな感じだった。そして15コーナーで僕はインサイドに入り、彼はブレーキングの後半でラインを締めてきたんだ。その動きは予想外だった。僕は接触を避けようとゼブラに接触し、それから彼にも少し当たった。幸い、転倒はしなかった。そして、バスティアニーニが僕をオーバーテイクしていったんだ」
「ペナルティについては、僕は理解できない。もしすべてのレースがこういうことになったら、オーバーテイクがなくなって、誰もトライしなくなる。レースの本質が失われるだろう」
積み重なっていたものが噴出した感のあるミラーに対し、ミルは今回のアクシデントはあくまでもレーシング・アクシデントであり、特異なものではない、と考えているようだった。