毎年、全日本ロードレース選手権をまわり、シャッターを切り続けるカメラマン「Nob.I」がお届けする『カメラマンから見た全日本ロード』。第5回は7月17~18日に開催された第5戦、第53回MFJグランプリ 鈴鹿サーキット。鈴鹿8耐と日程が入れ替わったことで初の真夏開催となった鈴鹿で起きたドラマとは?
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本来であれば鈴鹿8耐の日程でしたが、延期により例年11月の全日本ロード鈴鹿MFJ-GPと日程交換。
史上初、真夏のスプリントレースとなりますが、今回はどのようなドラマがあるのでしょうか?
鈴鹿8耐に向け体力づくりしてきているものの、この炎天下のなか、さらにコロナ禍によりマスクも着用しながら、4クラスのレースを無事消化しなくては……
ちなみに、コースによっても変わりますが、レースを撮影すると、私の場合大体1日1万~1.5万歩歩きます。
日曜日の決勝日はコースとグリッドを少なくとも4カテゴリー分往復するため、歩数や移動距離だけを考えれば、鈴鹿8耐の日中より多いかもしれません。
今回の目玉は、ヤマハの白地に赤いラインを入れたWGP参戦60周年記念カラー。
2019年の鈴鹿8耐、TECH21カラーが記憶に新しいですが、ヤマハは節目に記念カラーリングで楽しませてくれます。
このようなスペシャルカラーになると「撮らなくてはっ!」と気合が入ります。
では、土曜日のJSB1000決勝に参りましょう。
JSB1000レース1では、セーフティカーが出たものの危なげなく中須賀克行選手(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が勝利し、年間チャンピオンに早くも王手をかけました。
2021年シーズン、毎戦2~3位争いはかなりの混戦模様で、それが早々に中須賀克行選手の年間王者王手にも繋がっています。
JSB1000では、名越哲平選手(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)が2021年シーズン初表彰台、2位を獲得。前半は苦しいレースでしたが、これから巻き返してほしいです。
3位は日浦大治郎選手(Honda Dream RT 桜井ホンダ)。
最近全日本ロードレースはスポット参戦となっておりますが、実は全日本スーパーモト、2019、2020年のシリーズチャンピオンです。
スーパーモトはショートサーキットで開催され、レースがすごく身近に感じるカテゴリーです。
全日本ロードで戦っている選手がスポット参戦していたりするので、ぜひ足を運んでみてください。
続いて日曜日に参りまししょう。
暑さは変わらず、当初の日程では鈴鹿8耐決勝。
毎年この時期、2019年は台風が来たり、スタート前に大雨が降ったりして、毎度何らかの天候不順があるのですが、2021年は2日間晴れ渡りました。
残念ですが仕方ありません。
チャンピオンがかかったレースになると、選手はもちろんですが、カメラマンも緊張します。
第2戦の鈴鹿2&4の際に書きましたが、広いサーキット、起こることすべては撮れませんので、チャンピオンをどうやって表現しようかと、あれこれ思考を巡らせます。
いよいよJSB1000、レース2。中須賀選手はチャンピオン獲得なるのか?
序盤は清成龍一選手(Astemo Honda Dream SI Racing)が先行するものの、いつもの中須賀選手の展開。そんな焦ってはないでしょう。
中須賀選手の前を走る選手は、どのような気持ちなのでしょうか?
毎周後ろからプレッシャーをかけられて生きた心地がしないのでしょうか?
8LAP目、シケインで中須賀選手がトップに躍り出て、あとは独走態勢。
はてさて、チャンピオンをどう表そうかと散々悩んだ挙句、当時autosport webに掲載された写真がこちら。
じつは、狙っていた写真はこちら。
他のマシンが走っていたので、思ったよりも外側に膨らみ、鈴鹿の街並みが外れてしまいましたので、編集部員と相談して先の写真となりました。
ちなみに……狙っていたのはこんなイメージです。
悩みに悩んで計画しても、不確定要素があるのでなかなか思うようにいきません。
同じ狙いで隣にいた先輩カメラマンが「膨らんじゃったー」と叫んでいました(笑)思うようにいかないからこそ、おもしろいんでしょうけど。日々精進時です。
ST1000レース前に、ちょっと小ネタを。
アジアロードレース選手権(ARRC)に参戦中の伊藤勇樹選手(YAMAHA RACING ASEAN with伊藤レーシング)がスポット参戦。2022年のARRCは予定通り開催してほしいです。
新型カワサキZX-10Rが全日本ロードレース初参戦。
2021年の全車撮りは終わりましたが、このようなスポット参戦選手を拾って撮っていくのも意外に大変だったりします。
今回のST1000の決勝は波乱の展開でした。
トップ争いをしていた、作本輝介選手(Astemo Honda Dream SI Racin)と渥美心選手(TONE RT SYNCEDGE4413 BMW)が7LAP目に接触転倒し、首位争いから脱落。
無論、目の前で転倒したワケではないので、毎度の「アレ?作本選手と渥美選手が来ないぞ?どうした?」と疑問に思いながらの撮影。目の前のレースに集中集中。
しかも、今回は表彰式終了後、2位の岡本裕生選手(bLUcRUニトロレーシング51ガレージ YAMAHA)が失格となり、伊藤勇樹選手が3位に繰り上がりました。
レースは本当に何が起こるか分かりません。
大切なことはマンガから学んだ私ですが、某マンガの名台詞「あきらめたらそこで試合終了ですよ」、まさにその通りです。
選手だけでなく、カメラマンも最後まで気を抜けません。
こういう波乱が起こった時は、入賞者をきちんと撮れているか不安になりますが、意外と撮っているから不思議です。これはカメラマンあるあるのハズ(私だけ?)。
いかがでしたでしょうか?
2021年のST1000は本当に面白いです。
JSB1000は早くも5戦目で中須賀選手が10度目のシリーズ王者という偉業を成し遂げましたが、ST1000のチャンピオン争いはし烈で目が離せません。
次回の岡山もお楽しみに!