毎年、全日本ロードレース選手権をまわり、シャッターを切り続けるカメラマン「Nob.I」がお届けする『カメラマンから見た全日本ロード』。最終回は9月4~5日に開催された第7戦、オートポリス。2021年シリーズンチャンピオン決定だけではない、最終戦での人間ドラマとは?
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2021年「カメラマンから見た全日本ロード」もいよいよ最終回を迎えました。最終戦ではどのようなドラマがあるのでしょうか?
選手ともども、オートポリスで悩まされるのが、霧です。標高が高い場所にあるため、ときには雲に包まれ、天空の城ラ〇ュタのようです。
今回は台風14号が直撃するかも、とオートポリスへ向かう段階から天候が危ぶまれましたが、日頃の行いが良いのか、オートポリスを避けて通過していきました。
しかしながら、台風の影響は避けられず、J-GP3予選中に霧が出てきて「もしかしたら赤旗かも……」と走行が危ぶまれましたが、以降回復しました。
悪天候に悩まされながらも、決勝日はちゃんと走れるのが不思議なオートポリス。
きっと皆さんも日ごろの行いが良いのでしょう。
それではレースに参りましょう。
土曜日のJSB1000は中須賀克行選手(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がPPから危なげなく勝利し、全勝王者まであとひとつとなりました。
当ブログは「カメラマンから見た全日本ロード」ですので、詳細は編集部の記事にお任せし、普段あまり見られない中須賀克行選手のルーティーンを紹介しましょう。
走行前、マシンと自分に塩でお清めし、
ピット内で颯爽とマシンに飛び乗り
グリッドに着くと、布袋(アライのヘルメット入れ)からごそごそと何かを取り出し、おまじない(?)をします。
また、以前トークショーで、レースで使用する靴下は黄色の新品を履く、ということを話していました。
黄色がラッキーカラーということです。
さらに、中須賀克行選手はレースで勝った際、表彰台で空を見上げるのは、故人のお父さんにその勝利を報告しているそうです。
ルーティーンと言えば、2021年にMotoGPから引退した、バレンティーノ・ロッシ選手のステップ掴みが有名ですが、選手の特徴を探したり、思いや意気込みを知ったりするのも面白いですよ。
さらに、日曜日の決勝は、PPからそのまま独走し、ぶっちぎりで優勝。
10度目のJSB1000シリーズチャンピオン獲得に、シリーズ全勝優勝の記録も加えました。
2022年シーズンはどんな走りを見せてくれるのでしょうか?
続いて、ST1000に参りましょう。
ポールポジションは渡辺一馬選手(Astemo Honda Dream SI Racing)。
無事4位入賞を果たし、シリーズチャンピオンは渡辺一馬選手が獲得しました。その詳細は編集部の記事にお任せするとして……
当ブログは以前から少し触れていた、岡本裕生選手(bLU cRUニトロレーシング51ガレージ YAMAHA)に注目します。
何度かご紹介している通り、岡本裕生選手はチームノリック出身で、2018、2020年のST600チャンピオン。
2021年からST1000にスイッチしています。これまで、PPを獲得したり、表彰台には何度かあがっているものの、筑波ラウンドではスタート直後にストップしてしまったり、鈴鹿ラウンドでは失格となってしまったり、なかなかうまくいかないシーズンでした。
最終戦はどんな走りを見せてくれるのでしょうか?
予選は2番手だったものの、ホールショットを獲得。
レースは岡本裕生選手と、岡山ラウンド勝者の作本輝介選手(Astemo Honda Dream SI Racing)の一騎打ちに。
2台でドッグファイトを続けながら、岡本裕生選手がリードして迎えた最終ラップ。作本輝介選手が1コーナーで岡本裕生選手の前に出ます。
しかし、今度は岡本裕生選手がさよりんブリッジ手前で抜き返し……そのままチェッカー!
皆さん覚えてますでしょうか? 昨年のST1000初開催の開幕戦から今年の岡山ラウンドまでの勝者はすべてホンダCBR1000RR-R。
つまり、ヤマハYZF-R1の初勝利とともに、岡本裕生選手のST1000初勝利です!
ふたりのバトルは手に汗握る展開で、見ているこちらも緊張しながらの撮影でした。
シリーズタイトルの陰に隠れてしまいましたが、このようなドラマもありました。
シリーズチャンピオンの渡辺一馬選手も追わなければならない……でも、岡本裕生選手も追いたい。こういう時はジレンマに陥ります。
編集部、最終戦はけっこーよく撮れたと思いませんか?
J-GP3もドラマがありました。
3位以上でシリーズチャンピオン獲得の小室旭選手(Sunny moto Racing)が4位チェッカーとなり、尾野弘樹選手(P.MU 7C GALE SPEED)と同ポイント。
勝利数の多い尾野弘樹選手がまさかの逆転チャンピオンに!
ST600は小山知良選手(日本郵便HondaDream TP)が勝利するもポイントで及ばす、岡山で優勝した埜口遥希選手(MuSASHi RT HARC-PRO.)がシリーズチャンピオンを獲得。
そして、634カラーは残念ながら今回で見納め。
各クラスのシリーズチャンピオンが決まり、これにて2021年シーズンは終了。
鈴鹿の日程が移動になり、例年より早いシーズンオフに入ります。
私は地方選手権が残っているので、まだもう少しシーズンが続きます。
全7回の連載、いかがでしたでしょうか?
正直なところ、執筆はかなり大変で、どういう風に「カメラマンからの視点」を伝えようかなと散々悩み、また、いざ書いてみるとあれを撮っておけば、これを撮っておけば良かった、とないものねだり。
それでも、少しでも全日本ロードレースの魅力が伝わればと、うんうん唸りながらパソコンとにらめっこしてきました。
サッカーや野球をはじめ、他スポーツと同様、ロードレースにもドラマがあります。
チームがマシンを作り上げ、ライダーがそのマシンと人馬一体となって走る、二輪のロードレースはより人間味があり、魅力的だと感じています。
今はコロナ過で移動が制限されたり、人との接触が難しい状況ですが、落ち着いたら是非とも全日本ロードレースに足を運んでみてください。
2022年シーズンに向けて、各チームの体制が発表されています。
私が注目していた岡本裕生選手は、なんとYAMAHA FACTORY RACING TEAMにてJSB1000への参戦が発表されました!
もしも来期も連載がありましたら、岡本裕生選手の活躍次第では昔の写真を……(編集部、連載ありますか???)
2022年シーズンも皆さんとお会いできるのを楽しみにしております。