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MotoGP ニュース

投稿日: 2022.05.19 16:17
更新日: 2022.05.19 16:21

岩﨑哲朗の意志を継いで。3度目の正直で鈴鹿8耐トライアウトを通過したOGURA CLUTCH ORC with RIDE IN/全日本ロード

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MotoGP | 岩﨑哲朗の意志を継いで。3度目の正直で鈴鹿8耐トライアウトを通過したOGURA CLUTCH ORC with RIDE IN/全日本ロード

 2022年全日本ロードレース選手権第2戦鈴鹿2&4レースのJSB1000クラスでは、熾烈な表彰台争いがあったが違うドラマもあった。4月23日に開催されたレース1では8耐トライアウトも行われ、武田雄一がトップでフィニッシュ。OGURA CLUTCH ORC with RIDE INは鈴鹿8耐の本戦出場権を獲得したが、それまでに幾度となく試練を乗り越えてきたのだ。

 現在全日本ロードに参戦しているOGURA CLUTCH ORC with RIDE INは、ライダーの岩﨑哲朗とチーフメカニックの坂本崇がOGURAclutch with パワービルダーとして2016年に立ち上げたチームだ。

 岩﨑は2010年から全日本ロードST600クラスに参戦を開始。2016年から同チームを設立してJ-GP2クラスに監督兼ライダーとしてエントリーしていた。そして、2019年限りでJ-GP2が終わることとなり、岩﨑は2021年の鈴鹿8耐に坂本と参戦する新たな夢を抱き新設のST1000クラスにフルエントリーした。

2020年全日本ロード第1戦SUGO:ST1000決勝前にグリッドにつく岩﨑哲朗(OGURA CLUTCH with RIDE IN)
2020年全日本ロード第1戦SUGO:ST1000決勝前にグリッドにつく岩﨑哲朗(OGURA CLUTCH with RIDE IN)

 ところが、その初戦となる2020年全日本ロード第1戦SUGOの決勝レース中にクラッシュしたことが原因で岩崎が亡くなってしまった。しかしその後、坂本はチーム代表となり、全日本ロードに継続して参戦した。また、8耐トライアウトにも柴田義将、鈴木孝志とともに参加した。

 2度行われた2021年の8耐トライアウトでは、1度目の鈴鹿2&4で柴田が予選落ち、鈴木が決勝で多重クラッシュを喫したことででリタイア。2度目の鈴鹿サンデーロードレースでは坂本もライダーとなり、3台体制で挑んだが、雨が降り始めその後ドライとなった予選でレインタイヤを選んでしまったために柴田、鈴木が予選落ち。唯一決勝に出場した坂本は10位でゴールしたが7枠に入れなかったことで参戦権を獲得できず、鈴鹿8耐も新型コロナの影響で中止となった。

武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)/2022全日本ロード第2戦鈴鹿2&4 JSB1000 レース1
武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)/2022全日本ロード第2戦鈴鹿2&4 JSB1000 レース1

 岩﨑を亡くし、鈴鹿8耐への夢も破れた2021年シーズンを過ごした坂本は「2021年の全日本ロードがすべて終わった時は、正直やる気力がなくて、空っぽになって……。もともと哲朗がいて始まったことなので、(2022年の)体制を作るのにも簡単に誰でもいいですよというわけではなかったので、正直諦めかけていた部分はありました」と振り返った。

「そんななか、たまたま武田さんと意気投合して参戦しようとなって。バックアップしてくれているメインスポンサーの小倉康宏社長(小倉クラッチ株式会社)とも、『まだ終われないよね』と話しになり、やっとって感じで体制を作りました」

武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)
武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)

 武田も「昨年このチームで小倉クラッチを使って一緒に開発をして、そこから坂本さんと話すようになりました。最初は強面だからあんま喋りかけられなかったんですけど(笑) 話してみたら気さくでいい人で意気投合しました。今後のチームの方針が僕の考えてるところと似ていたのと、小倉クラッチのスリッパークラッチの普及などを僕がお手伝いすることが今年の仕事だと思っています」と語った。

「鈴鹿8耐に出たいという哲朗さんの目標というか、夢というかを坂本さんと叶えることは理解しています。僕は鈴鹿8耐を経験していますが、チームとしては経験してないので、僕が伝えられることは全て伝えて、より良いチームとして若手が乗っても自信持って頑張れと言えるようなチームにしていくことが僕の仕事かなと思います」

 続けて、同い年の岩﨑について「(同じサーキットにいても)話したことがなくて、挨拶する程度だったので、むしろ“哲朗さん”っていうのも申し訳ないくらいの感じです。『知らないのになんであいつは哲朗のためみたいな言ってるんだよ』って思わるかもしれませんが、チームとして哲朗さんへの想いは一緒に参戦させて貰って少しずつ理解してきたり、哲朗さんがどんな人だったというのも、もういっぱい話してくれたので、着替える時も哲朗さんの写真がトラックの中にあるので、挨拶しながら毎回セッションに挑んでいます」と述べ、チームの想いも背負っていることを説明した。

武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)が駆るヤマハYZF-R1
武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)が駆るヤマハYZF-R1

 2022年は1度のチャンスしかない8耐トライアウト。それが4月23日に行われた鈴鹿2&4のJSB1000クラスだ。予選では武田が28番手を獲得、8耐トライアウトに参加した17人中では3番手だった。

「(予選はトライアウト)3番手のタイムで後ろとは少し離れていたので、無理しないで帰ってきてくれればいいかなという話をして送り出しました」と坂本。一方で武田は、「8耐トライアウト勢で(参戦権が獲得できる)5位以内でゴールすることを重々承知していたし、スタート位置でなんとなくトライアウトのライダーは見てわかっていたのであまり気負わずにいきました」とコメントした。

武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)/2022全日本ロード第2戦鈴鹿2&4 JSB1000 レース1
武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)/2022全日本ロード第2戦鈴鹿2&4 JSB1000 レース1

 14周の決勝では、中冨伸一(WaveinnR)が転倒リタイア。武田は前方の加藤高史(Honda Soyukai Tochigi Racing A)を抜き、28位、8耐トライアウトではトップでチェッカーを受けた。

武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)
武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)

 武田は「2位か3位にいれればいいなと思って走り、中冨君が転んでいるのが見えて、8耐の順位でサインボードを出してくれていたので1位って書いてあり、抜かれてもいいと思いながら安全に走りました」とレースを振り返る。

「勝ちを狙えないポジションだけど、レース中ずっとドキドキしたし、速く走らないといけないし、転んでもいけないというプレッシャーがありました。いつもと違う感じで走れたし、チャンピオン争いした時以来くらいに集中したし、この歳で経験をさせて貰ってることに感謝したいし、完走したからプレッシャーも楽しかったと言えます。(参戦権獲得の)第一目標を達成できてすごく安心しました」

武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)/2022全日本ロード第2戦鈴鹿2&4 JSB1000 予選
武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)/2022全日本ロード第2戦鈴鹿2&4 JSB1000 予選

 坂本は、8耐トライアウトの通過に「『やったー』しかないですね。8耐が終わったくらい嬉しさがありました。8耐トライアウトを1位で通過できるなんてありがたいです。こんな機会をもらえたのが嬉しすぎて、目標を決めてから今までいろんなことがありすぎて、これで正式に挑戦できるというのが改めて思い知りました」と喜んだ。

「本当に、集まってくれた仲間もそうですし、応援してくれている方々も『絶対に諦めないでね』って言ってくれて、そればっかりです。それに支えられてやっていられるというのが正直です。哲朗も人に恵まれてたけど、俺も人に恵まれているかなというのはすごく感じます」

 辛い期間も経験し、下を向くこともあった坂本。選手からチーム代表、エンジニアなど様々な立場でチームを支えていたが、「武田さんは性格もタイムの上げ方も哲朗に似ている」と語る通り、チームはまとまり、今は鈴鹿8耐ので走るために前を向いて進んでいる。3人目のライダーは未定というが、8月7日に開催される3年ぶりの鈴鹿8耐では、武田、坂本がエントリーするOGURA CLUTCH ORC with RIDE INの走りを見届けたい。

武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)が駆るヤマハYZF-R1
武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)が駆るヤマハYZF-R1


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