2023年シーズンのMotoGP世界選手権は、3月24日〜26日に開催されるポルトガルGPで開幕を迎える。スズキが撤退した一方、新たにKTM傘下のGASGASが初参戦となり、5メーカー22台で争われる。史上最多となるシーズン21戦が開催され、さらに土曜日のプログラムにスプリントレースが加わるなど、新時代の訪れを予感させる2023年シーズン。その幕開けを直前に控え、あらためてライダーのラインナップ、レギュレーションの変更点、開催スケジュールを整理してご紹介しよう。
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■MotoGPクラスの基本レギュレーションと2022年からの変更点
MotoGPクラスは2002年からスタート。それまでの2ストローク500ccマシンに代わり、4ストローク990cc(現在は1000cc)マシンで争われることとなった。22シーズン目となる2023年のMotoGPは、5メーカー22台がエントリー。2022年をもってスズキが撤退した一方、新たにスペインのGASGASファクトリー・レーシング・テック3が参戦を開始。マシンの内訳はドゥカティが8台、アプリリアとホンダとKTMは4台(GASGASはKTMのマシンを使用)、ヤマハは2台となっている。
最高峰のMotoGPクラスは最大排気量1000cc、4ストローク、シリンダー数4気筒以下、最大ボア径81mmのエンジンを搭載したプロトタイプマシンと規定されている。その他にも157kgという最低車体重量(排気量800ccまでは150kg)、共通ECUの使用、年間8基のエンジン使用数(レース数が21〜22戦の場合。ただし、8基目のエンジン使用は第19戦以降から可能)が定められている。
最大燃料タンク容量は22リッターだが、後述するスプリントレースの場合は12リッターとなっており、チームはこの容量の専用燃料タンクを用意するか、通常のタンクの容量を減らすか、どちらかの手段を選択可能だ。タイヤはミシュランのワンメイクで、タイヤ径も17インチのみとなっている。2023年は、走行中にフロントの車高を調整する装置の使用が禁止された。ただし、レーススタート時に一度だけ作動する装置(いわゆるホールショットデバイス)は許可されている。
また、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)も刷新された。現在、MotoGPマシンに使われているのはマレリの共通ECUだが、これが『BAZ-340 ECU』と呼ばれる新型に切り替えられる。最大4倍の計算能力と最大10倍のデータ管理能力を備えるという高性能な新型ECUの導入に伴い、マシンには新たに『デンジャーライト』が装備される。転倒すると信号が直ちにレースディレクションに送信され、マシンのライトが点灯するなど安全性の向上に寄与する。
■MotoGPクラス車両諸元:ドゥカティ・デスモセディチGP23
車体 | |
---|---|
エンジン形式 | 4ストローク水冷V型4気筒DOHC16バルブ |
排気量 | 1000cc |
最高出力 | 250ps以上 |
最高速度 | 350km/h以上 |
トランスミッション | 6速シームレス |
フレーム | アルミツインスパー |
乾燥重量 | 157kg |
フロントサスペンション | オーリンズ 倒立フォーク |
リヤサスペンション | オーリンズ ショックアブソーバー |
タイヤ | ミシュラン(17インチ) |
ホイール | マルケジーニ マグネシウム鍛造 |
フロントブレーキ | ブレンボ ダブルカーボンディスク+4ポットキャリパー |
リヤブレーキ | ブレンボスチールディスク+2ポットキャリパー |
チェーン | D.I.D |
マフラー | アクラポビッチ |
ECU | マレリ |
燃料 | シェル レーシングV-Power |
オイル | シェル アドバンス Ultra 4 |
なお、ロードレース世界選手権(MotoGP)ではMotoGPクラス以外にも、Moto2クラスとMoto3クラスも全戦で併催される。Moto3クラスは、かつての2ストローク125ccクラスに変わって2012年からスタート。エンジンは4ストローク250cc単気筒で、2023年はホンダ、KTM、ガスガス、ハスクバーナ、CFモトがマシンを供給する(GASGASとハスクバーナはKTMのOEMマシン)。タイヤはダンロップのワンメイクだ。
2022年は佐々木歩夢が2勝を挙げてランキング4位を獲得。上位3名はMoto2にステップアップしたため、LIQUI MOLY HUSQVARNA INTACT GPから参戦する2023年はMoto3王者の最右翼と目されている。
また、2ストローク250ccクラスの代替としてMoto2クラスが始まったのは2010年のこと。エンジンはワンメイクでホンダの4ストローク直列4気筒600ccエンジンが使われていたが、2019年からはトライアンフ製直列3気筒765ccエンジンが供給されている。フレームは各コンストラクターが鎬を削っていたが、現在は多くのチームがカレックス製を使用する。こちらもタイヤはダンロップのワンメイクだ。
2023年の見どころは、やはり小椋藍(IDEMITSU Honda Team Asia)がチャンピオンを獲得できるかだろう。2022年、最終戦で無念の転倒を喫してランキング2位に終わった雪辱を晴らしてくれることを期待したい。しかしトレーニング中の骨折のため、事前テストに参加できていないことが気がかりではある。
加えて、ライダーが着用するレザースーツも、走行中にジッパーが外れることがないよう、新しいクロージングシステムを備えたレザースーツの着用が義務付けられる。2021年のカタルーニャGP決勝でファビオ・クアルタラロのレザースーツのジッパーが勝手に下りてしまったようなインシデントの再発はこれで防げることだろう。
■2023年のレーススケジュールの変更点
2023年のMotoGPでの大きな注目は、スプリントレース『MotoGP Sprint(スプリント)』の導入だ。走行距離はレース距離の50%で、各グランプリの土曜日に開催される。1位が12ポイントで、以下9位までポイントが与えられる。
1位:12ポイント
2位:9ポイント
3位:7ポイント
4位:6ポイント
5位:5ポイント
6位:4ポイント
7位:3ポイント
8位:2ポイント
9位:1ポイント
スプリントレースの実施に伴い、レースウイークのスケジュールも変更された。金曜日に45分間と60分間、2回のフリー走行を行い、両セッションの結果でQ1とQ2を振り分けるのは従来と同様(ただし、名称はそれぞれFP1/FP2からプラクティス1/プラクティス2に改められた)。
大きく変わったのが土曜日で、昨年まではFP3とFP4が行われていたが、今年はFP3を廃止。そしてFP4の代わりに30分間のフリー走行『FP』を実施した後、15分間ずつのQ1とQ2が行われて、スプリントとレースのスターティンググリッドを決定。そして、15時からスプリントレースが開催される。
日曜日に行われるウォームアップ走行は、昨年までの20分から10分に短縮。その後、ファンと交流する機会として、サーキットを1周する『ファンパレード』と『ヒーローウォーク』が新たに開催されることとなった。決勝レースは、14時からとなっている。ちなみに、2023年のMotoGPは時差や他のイベントに関係なく、すべての週末が同じタイムスケジュールで開催されることが決まっている。
■2023年レースカレンダー
2023年のMotoGPは、史上最多となる全21戦が開催される予定。開幕戦が実施されるのは、ポルトガルのポルティマオ・サーキット(正式名称:アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェ)。ポルトガルでシーズン初戦を迎えるのは初めて、さらにヨーロッパで開幕となるのは17年ぶりとなる。
初開催となるのは、第9戦のカザフスタンGP(ソコル・インターナショナル・レーストラック)と、第14戦のインドGP(ブッダ・インターナショナル・サーキット)だ。注目の日本GPは第15戦として、10月1日に決勝レースが行われる。舞台はもちろん、モビリティリゾートもてぎだ。最終戦(第21戦)は、11月24日〜26日にバレンシア(スペイン)のリカルド・トルモ・サーキットで実施される。
■2023年MotoGP暫定カレンダー(2022年9月30日発表時点)
Round | グランプリ | サーキット | 決勝レース日 |
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第1戦 | ポルトガル | アルガルベ・インターナショナル・サーキット | 3月26日 |
第2戦 | アルゼンチン | アウトドローモ・テルマス・デ・リオ・オンド | 4月2日 |
第3戦 | アメリカズ | サーキット・オブ・ジ・アメリカズ | 4月16日 |
第4戦 | スペイン | ヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエト | 4月30日 |
第5戦 | フランス | ル・マン-ブガッティ・サーキット | 5月14日 |
第6戦 | イタリア | ムジェロ・サーキット | 6月11日 |
第7戦 | ドイツ | ザクセンリンク | 6月18日 |
第8戦 | オランダ | TT・サーキット・アッセン | 6月25日 |
第9戦 | カザフスタン | ソコル・インターナショナル・レーストラック | 7月9日 |
第10戦 | イギリス | シルバーストン・サーキット | 8月6日 |
第11戦 | オーストリア | レッドブル・リンク | 8月20日 |
第12戦 | カタルーニャ | カタロニア・サーキット | 9月3日 |
第13戦 | サンマリノ | ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ | 9月10日 |
第14戦 | インド | ブッダ・インターナショナル・サーキット | 9月24日 |
第15戦 | 日本 | モビリティリゾートもてぎ | 10月1日 |
第16戦 | インドネシア | マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキット | 10月15日 |
第17戦 | オーストラリア | フィリップ・アイランド・サーキット | 10月22日 |
第18戦 | タイ | チャン・インターナショナル・サーキット | 10月29日 |
第19戦 | マレーシア | セパン・インターナショナル・サーキット | 11月12日 |
第20戦 | カタール | ロサイル・インターナショナル・サーキット | 11月19日 |
第21戦 | バレンシア | リカルド・トルモ・サーキット | 11月26日 |