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MotoGP ニュース

投稿日: 2023.03.21 10:24
更新日: 2023.03.23 17:19

2022年型ホンダRC213Vの大きな課題とドゥカティへの意識。2023年に向けた開発コンセプト

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MotoGP | 2022年型ホンダRC213Vの大きな課題とドゥカティへの意識。2023年に向けた開発コンセプト

 全20戦で争われたロードレース世界選手権の2022年シーズンが幕を閉じ、オフシーズンに日本の3メーカーが恒例のMotoGP取材会を実施した。ホンダでは桒田哲宏レース運営室長と山口洋正開発責任者にインタビューを行い、ホンダRC213Vについて聞いた。

 ホンダはこれまで大きくコンセプトを変更することはなかった。RC213Vは毎年徐々にアップデートを重ねてきたが、「そのやり方にも限界があると感じはじめてたのが2020年だった」と桒田氏はマシン開発について語る。

「もう次は変更しないといけないよねとなり、一旦落ちるかもしれないけど、最終的にそれを超えるポテンシャルを持てていたらチャレンジしていかないといけないというのが、もともと2022年のマシンに行き着いた理由です」

山口洋正(ホンダ・レーシング 開発室 RC213V 22YM開発責任者)
山口洋正(ホンダ・レーシング 開発室 RC213V 22YM開発責任者)

 2022年型RC213Vは「コンセプトとしては、リヤグリップ。ミシュランタイヤの攻略で、2021年の後半から同じようなコンセプトでマシンを変更していきました」と山口氏は言うが、実は各所で大きな変更が加えられていたのだ。

 エンジン開発は凍結され、仕様変更は2年ぶりとなったため、「集中してエンジンの開発は進めています。ただ、我々の主眼としてはまずリヤグリップだったので、そこをしっかり開発した上でトータルのパッケージとして戦闘力を上げていけるようにアプローチしたのが2022年ですね」という。

2022年型ホンダRC213Vのエキゾーストとリヤウイング
2022年型ホンダRC213Vのエキゾーストとリヤウイング

 しかし、シーズンが始まると多くの課題が出始めてしまい、前半戦はその対応に追われたようだ。

「事前テストから第1戦カタールGPまでは、わりとリヤグリップの中間加速の良いところが出せていたのですが、それ以降は安定して出すことがなかなか出来ませんでした。簡単に言うとスイートスポットが狭いようなマシンになっていました。本当にいろいろ変えてしまったので、それによって我々が気づけてなかったところもありました」

「基本骨格って我々は呼んでいますが、リヤの接地を安定させるために、どれか一個のパーツとかではなくて、そのものの配置とかも含めてクルマをまず作っています。そのバランスに対して、前後のバランスがあるので、ウイングも含めた外装の開発をして、2022年のパッケージとして準備しました。シャシーも同様ですね」

マルク・マルケスが駆るホンダRC213Vのフェアリング/2022MotoGP第18戦オーストラリアGP
マルク・マルケスが駆るホンダRC213Vのフェアリング/2022MotoGP第18戦オーストラリアGP

 終盤戦に差し掛かった第18戦オーストラリアGPでは、大きくカウルを変更した。フロントウイングの形状変更、サイドの空力パーツ、リヤウイングまでも追加したが、その変更はどのような理由だったのだろうか。

 山口氏は「リヤの接地を求めて、得られたところもありましたが、失ったようなところもありました。乗りやすさに気付きもあったので、開幕前までの考え方とはアプローチを変えて、前後バランスを調整したり、左右の旋回中のクルマに対する影響みたいなところの考え方でアップデートしました」という。

 ポル・エスパルガロがそのカウルを使用しなかったのは年間1回しかできない空力のアップデートをすでにしていたから。欠場が続いたマルク・マルケスが2023年に繋がるように「空力的に影響の大きいフィリップアイランド」から登場させた。

桒田哲宏(ホンダ・レーシング 取締役 レース運営室長)
桒田哲宏(ホンダ・レーシング 取締役 レース運営室長)

 また、この空力パーツはドゥカティからの影響もあったのか聞くと、桒田氏が以下のように答えた。

「一番最初に自分たちが出来なかったら、相手が何を目的にこれをやってるんだというのは常に見ておかないといけません。我々がやってることと違うところは参考にもなるので、前半戦の中で自分たちなりに解釈していったなかで方向性を決めました」

「ドゥカティの真似をしたものを付ければいいというものではないので、何を彼らが狙いとしてやってるかをすごくはっきりさせた上で、自分たちとして何を達成したいかを考えてやった空力です。参考にしていないと言うと嘘になると思いますが、全く同じではなく全然別のものにはなっています」

 また、フロントウイングをはじめとする空力パーツは基本的にダウンフォースが目的だそう。リヤウイングはバランスも考慮しているという。

「ダウンフォースを得ると抵抗が増えるので、効率をどう良くしてあげるか。四輪とは違って姿勢が変わるので、ダウンフォースの出方や影響、ハンドリングに影響するものが何かが、今非常に大きくなってきているので、ケアしなければいけないことが増えてきているという事実はありますね。そこも2022年はだいぶやりましたね」

 そして2022年は未勝利に終わったホンダ勢。ポル・エスパルガロはマシンが持つ強さが安定的に出なかったことが要因だったが、「その影響が思いっきり出てしまったのは逆に本当に申し訳ない。彼が実力を発揮できるマシンを用意できなかったのが、非常に悔いが残るところです。最後まで諦めずにやってくれていたので、非常にありがたかったです」と桒田氏が述べた。

「マルク・マルケスがいないこともいろいろな面で影響はありましたが、開発の中で迷走したのかなっていうところはあります。マルクがいなかったのが原因ではないと、本質はそこではないかなと思っています」

 オーストラリアGP以降の空力パーツは似たものがセパンテスト、ポルティマオテストでも使用されており、2023年も採用されるようだ。

 そして、大きく変わるのはレプソル・ホンダ・チームとLCRホンダの両チームがエキゾーストをSCプロジェクトからアクラポビッチに変更すること、スズキからジョアン・ミルとアレックス・リンスが加わることだ。

「別に何か問題があってというわけではありません。アクラポビッチさんとはスーパーバイク(SBK)、鈴鹿8耐はすでに一緒にお仕事させてもらっています。彼ら自身がノウハウを持っているのもあって、いろんな条件も含めて最終的にそういう判断にしました」

2022年シーズンの最終戦でマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が使用したホンダRC213V

2022年シーズンの最終戦でマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が使用したホンダRC213Vのギャラリーはコチラ

 ライダーの変更については「新しいライダーには他チームで経験をしていることが非常に重要なポイントだと思っていて、我々はそれに惑わされてはいけないんですけど、それを上手く活用するということは絶対に必要です。彼らが持っているスズキでのノウハウっていうのはもちろん期待はしていますね」

 また、2023年型ホンダRC213Vに向けては「リヤのグリップは今年得られたと思っています。それを維持しながら昨年わかったことを直していき、全体のパフォーマンスを上げていきます」と山口氏。

 桒田氏は「2022年得たものは5年後、10年後にきっちり活きていくはずだと思っています。2023年ももちろんチャンピオン争いをするのが目的ですし、その後もきちんと競争力を確保できるようなやり方だったり技術だったり、いろんなものを組み立てるのが今年のポイントになるのかなと思います」と意気込んだ。


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