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MotoGP ニュース

投稿日: 2023.03.21 11:43
更新日: 2023.03.23 17:18

「勝ちパターンが少なかった」ヤマハYZR-M1の課題と2023年型の展望

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MotoGP | 「勝ちパターンが少なかった」ヤマハYZR-M1の課題と2023年型の展望

 全20戦で争われたロードレース世界選手権の2022年シーズンが幕を閉じ、オフシーズンに日本の3メーカーが恒例のMotoGP取材会を実施した。ヤマハでは関和俊氏(プロジェクトリーダー)、矢田真也氏(ファビオ・クアルタラロ サポートエンジニア)、そして星野仁氏(フランコ・モルビデリサポートエンジニア)がインタビューに応じて、2022年型ヤマハYZR-M1と2022年シーズンの総括を語った。

 2021年にチャンピオンを獲得したヤマハは、2022年もタイトル防衛に励み最終戦までタイトル争いを繰り広げたが、惜しくも敗れた。ヤマハのマシン開発陣営から見た2022シーズンのヤマハYZR-M1を関氏は語った。

「最終戦までチャンピオン争いが出来たことを考えると、ものすごく悲惨だったわけではないと思いますが、最終的にはチャンピオンを獲れませんでしたので、そこは残念だったと思っています」

「2022年型のバイクへの適応に序盤何戦かを要して、第4戦アメリカズGPくらいからはある程度バイクとしてまとまってきたと思います。YZR-M1の強みはよく言われるようにブレーキング&ターンと思っていますが、特にファビオがブレーキングからエントリーというのがすごく強くて、うまくマッチし始めたのがそのオースティン(第4戦)くらいからだったのかなと」

「ただ、その乗り方で勝つためには前の方でレースをしなければいけないので、予選の順位が大事になってきます。シーズンの前半、ファビオはセカンドロウくらいまでを常に予選でキープ出来ていて、前方でレースすることができました」

モンスターエナジー・ヤマハMotoGPの関和俊プロジェクトリーダー
モンスターエナジー・ヤマハMotoGPの関和俊プロジェクトリーダー

 シーズンが後半に向かうにつれて表彰台の獲得が減ったことについては、予選の順位ともリンクしていたというが、ドゥカティ勢の影響もあった。

「特に後半戦は、ドゥカティ勢が常に予選の上位を占め、彼らの強いエンジンの後陣を敗してしまうというようなレース展開が多かったです。ライダーもすごく頑張ってくれましたが、無理をさせてアッセンやフィリップアイランドの転倒に繋がってしまったのかなと思っています」

 というのも、前年度の王者ファビオ・クアルタラロは第5戦ポルトガルGPでシーズン初勝利を挙げ、以降の5戦は表彰台や上位でチッカーを受けていたが、中盤にかけて何度か転倒があった。

「我々のバイクが予選で何か問題を抱えてたというわけではなくて、他メーカー、特にドゥカティが上手くリヤタイヤ、エクストラグリップを引き出すことが出来たのかなと考えています。敗因としてはバイクとライダーを含めたパッケージの勝ちパターンが少なかったことです」

「これは、他車との比較において、YZR-M1の車両特性によるところだと思っているので、来年に向けて改善していかなければならないと思っています」

2022年シーズンの最終戦でファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が使用したヤマハYZR-M1
2022年シーズンの最終戦でファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が使用したヤマハYZR-M1

 そんな最後までタイトルを諦めず戦ったヤマハのマシン、2022年型YZR-M1は2021年型からどのように進化していたのだろうか。

「2021年モデルのエンジンは、扱いやすさも利点だったので、その特性をキープしたまま、よりパワーの向上や効率を良くすることに取り組みました」

「車体に関しては双安定性やトラクションの向上に寄与するようなアイテムを投入してますし、エアロはご存知のとおり去年に比べると幅が大きくなっています。ダウンフォースを増やすとか、よりドラッグを減らして効率を良くするということに取り組んでいます」

「電子制御は共通ソフトの縛りがあり、常にアップデートしていって、エンジンのパフォーマンスを引き出す形で改良を加えていますね」

 エンジン、車体やエアロ、そして制御系も全て手を加え、さらにトラクションコントロールやエンジンブレーキの調整などは、各走行ごとに調整も行っていたという。そんなヤマハは、2022年型のエンジンスペックで伸び幅が大きいものを目指していた。

「我々が当初期待していたよりも、パフォーマンスを引き出すことができなかったと思います。他車との比較の結果になりますが、最高速は常に下位の方にいるので、やはりパフォーマンスが足りなかったのかなと思います」

 また、クアルタラロからの一番のリクエストも「最高速」だったと矢田氏はいう。「他車との比較で『コーナーのエントリーは悪くないよ、むしろ良いよ』というコメントをくれますが、どうしても『加速から特にストレートの部分で失ってる部分が大きいね』という話で、そこを改善できれば、全体的な底上げができるのかなと思います」

「ドゥカティを凌駕するような最高速を目指しても、他のバランスが崩れたら多分ダメなんですよね」と語る通り、技術的に可能であってもすぐに実現させることはない。

 課題の残る2022年だったが、「勝ちパターンを増やすことに取り組んでいかないといけないと思っています。トップスピードも弱点だと思っているので、バランス取りつつ改善していきます」と関氏は意気込んだ。セパンテスト、ポルティマオテストではすでに昨年より最高速の出るエンジンで走行しており、2023年はそのエンジンを武器にタイトル奪還を目指すこととなる。

2022年シーズンの最終戦でファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が使用したヤマハYZR-M1

2022年シーズンの最終戦でファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が使用したヤマハYZR-M1のギャラリーはコチラ


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