モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”、ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングカーのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第2回目“マツダ・ロードスター編”をお届けする。
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世界のトレンドをリードした日本車といえば、ユーノス・ロードスター(NA型)が最右翼だ。みんなが忘れかけていた“ライトウエイト”を見事に復活させてみせた。
ほぼマイナーチェンジ版の2代目NB型、ややアメリカンテイストで肥大化した3代目NC型に続いたのが現行の4代目ND型だ。ラインナップの中で、原点回帰というコンセプトにジャストミートしたのが、ベーシックな『S』グレードである。
中心グレードである『Sスペシャルパッケージ』に対して、『S』はリヤのスタビライザーも、LSDも付かない。走らせると、現代の基準ではかなり姿勢変化が大きく、ロールスピードも速い。
そりゃそうだ。初代ロードスターは、ヒラリヒラリという軽快な走りを信条としていたからだ。あえてロール剛性を下げて、姿勢変化で曲げ、そこから低い次元でオーバーステアへ移行するのが、“ロードスターの流儀”なのだ。
ということで、平たく評価するなら『S』はロール剛性不足であり、スタビリティが不足している。ダンパーも締められ、LSDの恩恵でトラクションも高い『Sスペシャルパッケージ』のほうがスポーティで、ビルシュタイン製ダンパーが組み込まれた『RS』はさらにいい、ということになるだろう。
だが、ちょっと待ってほしい。あくまで個人的な見解だが、このマツダのFRオープンカーは、ライトウエイトでも、オープンスポーツでもないと思うのだ。既存のスポーツカーのカテゴリーに入らない、『マツダ・ロードスター』というジャンルの孤高なスポーツカーなのである。そう思えるほど個性的であり、独自性が高い。