モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第7回目、スバル WRX STI編をお届けする。
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平成という時代は日本車が世界で評価されるレベルに達した、バブル景気の末期に始まった。好景気に押され、予算もリソースも豊かだった時代。それはまさに現在と真逆だ。
景気の後退とともに徐々に光を失っていった日本車のなかで、対照的に存在感を強くしていったのが、コンパクトなボディに強力なエンジンを載せたエボリューションモデルたちだ。
スバル・インプレッサWRXやミツビシ・ランサー・エボリューション、ホンダ・タイプRファミリー⋯⋯これらのモデルは国境を越え、マニアックなファンを増やしていった。
ところが現在、タイプRは限定モデル的な印象で、ランエボに至っては影も形もない。生き残ったのはWRXだけである。その大きな違いは、ベースモデルの存在だろう。
人気があるのは特定のモデルだけだという理由で、ベースモデルをラインアップから消したミツビシ(とホンダ)は将来を閉ざしてしまった。
エボモデルは、ベースモデルがありきの存在で、そのコントラストがあればこそ、魅力的なのだ。売りやすいモデルだけを作ればいいという安易な企画や発想は、どういう感覚から生まれるのだろう?