モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第9回目、トヨタ・ヴィッツ編をお届けする。
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2代目トヨタ・ヴィッツのキャッチコピーを覚えている人はいるだろうか? 正解は『水と、空気と、ヴィッツ。』だった。ある種の無味無臭な世界が狙いならクリーンでシンプルなデザインにすべきだと思うが、実際にそうなったことはない。高級感や上質感を出そうとしている部分があり、それが逆にそこはかとない安物感を醸してしまっている。
仕事などでレンタカーを利用する機会が多い人は、ヴィッツに乗ることもあると思う。1.0リッター3気筒エンジンに14インチタイヤを組み合わせたレンタカー仕様が、実はヴィッツのベストバランスだ。
ボディ剛性もサスペンションも、それに見合ったレベルだからだ。スモールカーらしい軽快感や操縦感覚はないが、ステアリングを切れば曲がる。
エンジンもトランスミッションもステアリングも応答遅れは大きいが、それが常にあるため、むしろ安定感がある。バッテリーの充電状況などに影響され、その都度応答が変化するハイブリッド車よりはるかにいい。
ヴィッツレースで使用されるのは、2代目以降は1.5リッターエンジンを搭載した『RS』をベースとしたモデルだった。それが現行の3代目では2017年のマイナーチェンジで消滅。その代替モデルとして『GRスポーツ』が登場した。
5速MT以外にも10速シーケンシャルモード付CVTも展開されており、現在は同モデルのRacingパッケージでレースに参戦できる。