モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第10回目、マツダ・デミオ編をお届けする。
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「だけどマツダだからなぁ」というのは、筆者の大先輩カメラマンによる2012年デビューの初代CX‐5評だった。その後、マツダのイメージは時間の経過とともに改善され、現在はおそらく、過去最高の状態になっていると思う。
しかしクルマ作りよりも、イメージ先行という印象は否定できず、基本的なリソース不足はクルマに現れている。スバルのように毎年、年次改良を繰り返しているが、それは低い完成度の証明でもある。そして、その改良が必ずしも奏功するとは限らないのも困ったところで、CX‐3のように改良のたびに乗り味がハードからソフトへと大きく振れるケースもある。
さて、そんなマツダの最小モデルがデミオだ。初代はハイトワゴン系スモールカーとして1993年に登場。価格を徹底的に抑えるため他車からの流用パーツが多く、グレー一色設定のインパネで言えば、微妙に色味が違う部品が集まり、20種以上ものグレーがインパネまわりに乱立するという大惨事だった。だがそのコストカットこそがマツダの窮地を救い、復活の原動力となった。
現行の4代目デミオは、こうした悪夢を感じさせないラグジュアリーな雰囲気を醸し出している。現行型が出たばかりの時は「これはもはやデミオではない!」と思った。居室やラゲッジは狭いが、デザインの質感が高く、魅力的だ。買う気になった。だが走らせてみるとノーズが重くアンバランスで、さらにピックアップも悪いディーゼルか、全域でスカスカの1.3リッターガソリンか、という究極の選択を迫られた。