モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第13回目は番外編、スズキ・スイフトスポーツ編をお届けする。
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1トン以下の軽量ボディに1.4リッターターボエンジン。想像するだけでワクワクする。それがスズキ・スイフトスポーツのパッケージだ。
現代のクルマはボディが大型化し、電子制御が大きな顔をしている。さらに、タイヤの性能も向上しているため、どうしても運転実感が薄くなり、楽しさを感じにくい。そういった状況下でいちばんホットなのが、スモールカーベースのスポーツモデル。スイフトスポーツはその1台だ。
初代スイフトは軽自動車がベースだった。4代目にあたる現行型のルーツは2004年に登場した2代目であり、スズキ初の世界戦略車でもある。この2代目はハンドリングでスポーティさを演出したかったようだ。
ノーマルでもオーバーステア傾向が強く、ステアリングアクションだけでテールアウトしてしまう。他のスズキ車には見られないこの特性は、日本のジャーナリストなどには好評だった一方、ヨーロッパでは酷評され、一部地域では販売を見合わせる事態になった。
運動性能の良さをオーバーステアでしか表現できないとすれば、自動車メーカーとしては稚拙で、スポーツドライビングの楽しさを曲解している。2代目はマイナーチェンジに際し、リヤサスペンションを強化、設計変更することで常識的なスタビリティを確保した。
だが、スズキは現行型のCMでも相変わらずオーバーステアな走りを披露している。困ったものだ。
スイフトの特徴は、ベーシックなスモールカーであることだ。余計な要素は盛り込まず、シンプルに作られている。たとえば、開口部の高いリヤハッチ。これは荷物の積み下ろしは大変になるが、その分剛性面では有利になる。
立ったAピラーも空気抵抗的に不利だが、モノコック構造では無理が少ない。いずれも軽量化にも有効だ。余計なスペースは持っておらず、スポーツモデルのベースにマッチしている。