モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第16回目シトロエンC3編をお届けする。近年のラリー界でも、独自路線を貫くC3。高性能グレードは存在しないが、その中身にはしっかりした濃いめのスポーティマインドが根付く1台だ。
* * * * * * * *
この企画は「モータースポーツで活躍しているマシンのベース車両はどんなモノなのか?」を紹介するもの。
過去15回、不定期に連載してきたが、これまではスポーティな高性能モデルばかりだった。しかし、今回は少し様相が違う。シトロエンC3には高性能版は存在せず、エンジンも1.2リッター3気筒ターボのみ。見た目はスモールSUVである。
シトロエンというブランドは、プジョー・シトロエングループ(グループPSA)内にある。スタンダードがプジョー、上級がシトロエンという棲み分けだ。
ただし、シトロエンは高級・高性能というわけではない。デザイン志向が強く、ユニークな存在として設定されている。
「なんだ、スポーティではないのか」という感情は理解できなくはない。しかし、オモチャのようにかわいくデザインされたクルマでも、ニッサンのキューブやジュークとは違い、C3の中身はホンモノなのだ。
1.2リッターのダウンサイジングターボエンジンは、かなり元気だ。高回転は得意ではないが、その分低回転域でしっかりトルクを発生してくれる。
シリンダーの数は多ければ多いほど、基本的にはパワーバンドが広くなる。ただし、ダウンサイジングターボの最重要項目はターボラグの低減だ。
基本構造として、気筒数が少ないほうがタービンまでの距離が短く、その点では有利になる。トルクを太くし、極低速からのドライバビリティを確保したほうが走りの質を高めることができる。ゆえに、C3のエンジンはドライバビリティが高い仕上がりになっており、スポーティな走りを実現しているのだ。
前回取り上げたトヨタ・カローラスポーツ(1.2リッター直列4気筒ターボ)とは極めて対照的である。