更新日: 2020.04.28 11:25
アメリカン・スポーツカーの凄技を披露。ドイツ高級車ブランド群とガチ争い!/キャデラック CT6 実践試乗インプレッション
話題の新車や最新技術を体験&試乗する『オートスポーツweb的、実践インプレッション』企画。お届けするのは、クルマの好事家、モータージャーナリストの佐野弘宗さんです。
第7回は、米ゼネラルモーターズが展開するキャデラックの最高級セダン、CT6を取り上げます。
CT6は、2019年春に内外装のリニューアルを実施し、10速トランスミッションを新たに採用するなど、細部にわたってチューニングが施され、全方位で磨きがかけられています。
レクサスやジャーマンスリーとは違う、ダイナミックな佇まいやパフォーマンスをたっぷりとご紹介しましょう。
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■GMの変遷とアメリカンスポーツカー、キャデラックの『今』を語る
キャデラックは、米ゼネラルモーターズ(GM)が展開するブランドのひとつだ。GMといえば2007年まで長らく世界最大の自動車メーカーだった。
全盛期には日本のいすゞ、スズキ、スバルに資本投下して、欧州ではオペル/ボクスホールやサーブを傘下におさめていた。
しかし、2008年のリーマンショックで経営が急速に悪化し、2009年には経営破綻してしまう。
その際に一時的に国有化されたGMだが、現在は純粋な民営企業に戻っている。ただ、日本メーカーとの資本関係は、それ以前にすべて解消しており、欧州部門のオペル/ボクスホールも3年前に手離した。
現在のGMのグローバル販売台数は、世界で4〜5番目といったところだが、最近はオーストラリアやタイからの撤退も報じられる。今後のGMは、本拠地の北米のほか、南米、中東、韓国などの、彼らのコア市場への集中度合いを高めるらしい。
つまり、GMは日本や欧州といった(北米以外の)先進国市場で、もはや大量販売するつもりはないのだ。しかし、日欧から完全撤退するわけでもなく、高付加価値のニッチ商品に特化する。
ここでいう“高付加価値でニッチ”なGM車とは、ずばりキャデラック、そしてコルベットやカマロといったシボレーのスポーツカーだ。
最近まで日本でも販売されていたシボレーブランドの実用車(多くは韓国GM=旧デーウ製)は、2016年〜2017年に姿を消した。
実際、現在の日本で販売されているGM車は、キャデラックとシボレー・カマロだけである。コルベットについては本国でのモデルチェンジに合わせた一時休止期間で、2021年春以降に日本発売される予定という。
CT6は、そんなキャデラックのフラッグシップセダンである。2015年春に世界初公開されて、日本では2016年に発売となったCT6だが、先代にあたるDTSから一転して、エンジン縦置きFRベースのレイアウトとなったほか、車名も変わったのが当時話題となった。
今から振り返ると、このCT6からキャデラックの再構築がスタートした。翌年デビューした新型クロスオーバーSUVも、それまでと別系統のFFレイアウトがベースとなり、車名も新たに“XT5”となった。
その後も、キャデラックは矢継ぎ早にニューモデルを投入して、米本国における最新2020年モデルのラインアップは、クロスオーバーSUVが大きいほうからXT6、XT5、XT4、そして同じくセダンがCT6、CT5、CT4……と、SUVとセダンが3台ずつならぶ整然としたものになった。
そして、その2本の柱の頂点に、別格の存在として大型SUVのエスカレードが君臨する……という構図だ。
この秋の2021年モデルでは、そのエスカレードも新型へと切り替わる予定なので、ここでCT6から着々と進められてきたキャデラックの刷新計画がひとつの完成を見るのだろう。