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クルマ ニュース

投稿日: 2020.09.15 14:30
更新日: 2020.09.15 22:11

【スバル新型レヴォーグ試乗】新旧比較でわかる、新型レヴォーグのシャシー性能の劇的な進化

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クルマ | 【スバル新型レヴォーグ試乗】新旧比較でわかる、新型レヴォーグのシャシー性能の劇的な進化

 2020年10月15日に発表発売が予定されている、スバル新型レヴォーグ。フルモデルチェンジだけにデザインの変更はもちろんだが、エンジン、プラットフォーム、ボディ、そしてスバル自慢のアイサイトまで新設計される気合いの入れっぷりで、その性能のデキに注目が集まっている。

 ここ最近「スバルはどうしたの?」なんて声が囁かれているが、新型レヴォーグの進化は、その心配を完全に吹き飛ばす、スバルエンジニアの意地とプライドが伝わってくる渾身の1台に仕上がっていた。そのなかでもシャシー性能の飛躍的な進化は圧巻だった。

 スバルの新型レヴォーグと前型レヴォーグを複数回乗り換え、パイロンスラロームを行った。一度乗れば明らかだが、何度乗っても間違いなく、新型は動きがいい。

こちらは現行レヴォーグの走り。メイン写真の新型レヴォーグと比べると、写真上ではロール量の違いはわかりづらいが、乗ると明らかに新型のほうがロールが抑えられていた。
こちらは現行レヴォーグの走り。メイン写真の新型レヴォーグと比べると、写真上ではロール量の違いはわかりづらいが、乗ると明らかに新型のほうがロールが抑えられていた。

 最も顕著な違いはロールで、新型は前型より圧倒的にロールが小さい。新型から前型に乗り換えると、派手なロールに愕然とするほどだ。逆に、前型から新型に乗り換えると「こんなに違うもの?」と、思わず感嘆の声が漏れる。

 新型のほうが安心して舵をあてられるし、切り込んでステアリングを戻していく一連のプロセスが気持ちいい。

 ロールの衝撃が大きすぎてその影に隠れがちだが、ステアリング操作時の感触がいいし、ブレーキのタッチがいい。乱暴に結論を出し過ぎかもしれないが、新型の動きは何もかもがいい。

 劇的に良くなった理由のひとつは、シャシーの進化だ。新型と前型は車体骨格を構成するプラットフォームが異なる。

 前型は旧世代のプラットフォームに手を入れて剛性を高めていたが、新型は2016年に発売された5代目インプレッサから導入した新世代のSGP(Subaru Global Platform)を採用する。

5代目インプレッサから導入した新世代のSGP(Subaru Global Platform)を採用する。また、ワゴン系の弱点であるリヤまわりは、新構造によるさらなる剛性アップが図られている。
5代目インプレッサから導入した新世代のSGP(Subaru Global Platform)を採用する。また、ワゴン系の弱点であるリヤまわりは、新構造によるさらなる剛性アップが図られている。

 さらに、新型レヴォーグは国内のSGP採用モデルでは導入していなかった新構造を採用して剛性を高めた。その結果、ボディのねじり剛性は前型比で44%向上したという。

 ボディ剛性が向上したことによって、サスペンションがきちんと動くようになった(前後のストロークを向上させてもいる)。

 サスペンションへの入力によってボディが変位してしまうと、ダンパーやスプリングは狙いどおりに機能せず、車両運動性能の面でも、フィーリングの面でもネガティブな影響が顔を出す。

 だから、新型レヴォーグではまず、剛性の向上に取り組んだ。剛性の確保が基本中の基本なのは、カテゴリーを問わず、レーシングカーの設計にも共通する考えである。

 ステアリング機構を変更したのも大きい。前型レヴォーグはピニオンアシスト(1ピニオン式)タイプの電動パワーステアリング(EPS)を採用していたが、新型はデュアルピニオン式(2ピニオン式)を採用した。

パワーステアリングのデュアルピニオン化により、ハンドルを切った瞬間からセンシングが始まり、そのタイミングでモーターが始動する。より速く、高精度のトルクが拾えるようになり、ステアリングの切り始めから、切っている最中でもスムーズな操作を実現する。
パワーステアリングのデュアルピニオン化により、ハンドルを切った瞬間からセンシングが始まり、そのタイミングでモーターが始動する。より速く、高精度のトルクが拾えるようになり、ステアリングの切り始めから、切っている最中でもスムーズな操作を実現する。

 2ピニオン式にするとステアリング操作軸とモーターアシスト軸を切り離すことができてフリクションが減り、応答性が高くなる。

 最上位グレードの『STI Sport』には、スバル初の電子制御ダンパーを採用した。前輪左右のダンパーには加速度センサーを搭載している。

 シート下に搭載するECUには加速度センサーとジャイロ(角速度)センサーを採用し、車体やタイヤの動き、ステアリング舵角に車速などの情報から、必要な減衰力を演算して“そのとき”に最適な減衰力に制御する。

 いわゆるフィードバック制御というやつだが、「それで間に合う?」という心配は無用。1秒間に500回演算(0.002秒に1回)して指示を出すので、ドライバーの感覚とのズレは生じない。

最上級グレードの『STI Sport』には、スバル車として初めて電子制御ダンパーが採用される。加速度センサーと車両情報により、減衰力特性をリニアに最適化する。
最上級グレードの『STI Sport』には、スバル車として初めて電子制御ダンパーが採用される。加速度センサーと車両情報により、減衰力特性をリニアに最適化する。

 減衰力の低い側はインプレッサより低く、高い側はWRX STIよりも高いという。ロールは抑えておきながら、ひとたび強い入力があったときには、しなやかに受け止めることができるようになった。

 新旧レヴォーグを乗り比べて感じた顕著な違いは、ボディ剛性の高さもさることながら、電子制御ダンパーの効果も大きい。

 その電子制御ダンパーと2ピニオンのEPSを手に入れたことで、新型レヴォーグは前型にはない機能を手に入れることができた。それが、ドライブモードセレクトだ。『STI Sport』専用の機能である。

 ドライブモードセレクトは、パワーユニット(トランスミッション)、EPS、電子制御ダンパー、エアコン、AWD、アイサイトの各制御をモードごとに最適化し、レヴォーグを“キャラ変”させる。モードはComfort、Normal、Sport、Sport+の4種類だ。

(アイサイトX搭載車の)センターインフォメーションディスプレイには、ダブレットのような画面が鎮座する。『STI Sport』専用のドライブモードセレクトでは、制御モードによりCOMFORT、NORMAL、SPORT、SPORT+、の4種類を、画面上のタッチ操作により選択できる。
(アイサイトX搭載車の)センターインフォメーションディスプレイには、ダブレットのような画面が鎮座する。『STI Sport』専用のドライブモードセレクトでは、制御モードによりCOMFORT、NORMAL、SPORT、SPORT+、の4種類を、画面上のタッチ操作により選択できる。

 Comfortを選択すると、電子制御ダンパーは乗り心地重視の減衰力に変わる。ストローク速度に対する減衰力の発生は低めだ。ゆったりした乗り味がメインだが、大きな入力があった際には瞬時に減衰力を高め、不快なロールや振動の発生を抑える方向に作動する。

 いっぽう、Sport+を選択すると、ストローク速度に対する減衰力の発生を高めの制御に切り換える。ロールの発生を極力抑える仕様だが、路面から大きな入力が入った際は減衰力を下げ、乗り心地を悪化させないよう制御する。

「スポーツと聞くと、硬くて跳ねる脚をイメージすると思いますが、そうではなく、ロールは抑えるけれども乗り心地はいい。それが両立できるダンパーにしています」と、開発を担当したエンジニアは説明した。

 WRX STIをしのぐ引き締まった脚と、インプレッサをもしのぐしなやかな脚を両立しているのが、電子制御ダンパーを採用した『STI Sport』だ。

 EPSは、Comfortを選択すると取り回しの良さを優先。Sport+を選択すると、スポーツ走行に適した、低速からしっかりして変化の少ない操舵力を実現するセッティングに変わる。

 Comfortを選択した際の『取り回しの良さ』は、操舵力を軽くすることで実現しているが、フリクションの大きいステアリングシステムだと非線形な特性(切り込んでいったときの感触がリニアではない)が目立ってしまう。

 だが、新型レヴォーグはフリクションの小さな2ピニオン式を採用したことで、リニアな感触を残しながら軽くすることができたという。

 コンフォートとスポーツの両立と言うのは簡単だが、背反する要素だけに両立は難しい。その背反要素を両立させ、「前型は一体何だったんだ?」と思わせるほど大きく進化したのが新型レヴォーグだ。

 ベース(GT/GT-Hグレード)のポテンシャルも高まっているが、キャラ変が味わえる『STI Sport』の魅力は群を抜く。

ドライブモードセレクトは、減衰力制御だけでなく、パワーステアリングのアシスト量やパワートレーンの応答まで切り替わる“キャラ変”が可能だ。
ドライブモードセレクトは、減衰力制御だけでなく、パワーステアリングのアシスト量やパワートレーンの応答まで切り替わる“キャラ変”が可能だ。


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