2020年11月28日、2020年を締め括るスーパーGT最終戦の予選日に富士スピードウェイにて、Audi RSシリーズの最新モデル3台が披露された。発表する場所やタイミング、そのすべてに“モータースポーツ”の要素を感じさせる演出だ。
それもそのはず、アウディRSシリーズはサーキットで培った経験と知識がフィートバックされたモータースポーツ直系といえるモデル。その歴史を紐解きながら、最新のアウディRSシリーズの魅力を自動車ジャーナリストの大谷達也が語り尽くす。
アウディのハイパフォーマンスシリーズであるRSモデルは、同社のモータースポーツ活動を幅広く支えるAudi Sport GmbHによって企画・開発されている。つまり、RSモデルにはアウディがモータースポーツ活動で培ったノウハウがそのまま息づいているといっていいだろう。
Audi Sport GmbHは、1983年に当初quattro GmbHとして設立された。ご存知のとおり、quattro(クワトロ)はアウディが手がけるフルタイム4WDに与えられた特別な名前だが、その商標を管理する目的で誕生したのがquattro GmbHだった。
1981年の世界ラリー選手権でデビューしたAudi quattroは、1986年までの6年間に4つのワールドタイトルを獲得。つまり、Audi Sportは設立当時から常にモータースポーツとともにあったのだ。
1990年代に入るとquattro GmbHはRSの名を冠したロードカーの開発に着手。さらに2008年にはアウディR8をベースとしたGT3車両のR8 LMSを完成させ、カスタマーレーシングという新たな分野に進出する。
アウディR8 LMSは世界中のGT3レースで大活躍。とりわけ12時間や24時間などで競われる耐久レースが得意で、ニュル24時間ではこれまでに5勝を挙げた。
アウディのカスタマーレーシングはGT3だけに限らず、GT4やTCRにも参入し、いずれのシリーズでも侮りがたい実力を発揮しているのはご存じのとおりである。
quattro GmbHがAudi Sport GmbHと名前を変えたのは2016年のことだが、彼らの活動内容を考えれば、このほうがずっとわかりやすいといえる。