市販車の最新ニュースや購入ガイドなどをオートスポーツwebならではの視点で掘り下げる『オートスポーツweb市販車深掘り企画』。今回は、最新の国産コンパクトカーを取り上げます。
2020年はトヨタ・ヤリス、ホンダ・フィット、ニッサン・ノートと国産コンパクトカーの主力3台が続々とフルモデルチェンジを実施。ここ数年、SUV人気の影に隠れがちのカテゴリーだったが、新世代技術がふんだんに注がれた最新モデルの投入で、状況は大きく変わりつつあります。早速、この3台の魅力を深掘りしていきましょう。
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今回取り上げる3台のうち、最も注目度が高いのは2020年末に新型に切り替わったニッサン・ノートだ。
先代はガソリン車とe-POWERと名付けたハイブリッド車の2本立てだったが、新型ノートはガソリン車に見切りをつけて、e-POWER車のみで勝負を挑む。
パワートレインは1.2リッター直3エンジンが発電を行い、その電力でモーターを動かす仕組み。先代以上にモーターの出力が高められ、発電効率も改良された。
ニッサンの誇る強力な運転アシスト機能を備える『プロパイロット』をオプションで選べるようになるなど、走行関連機能の充実ぶりは新型ノートの大きな強みだ。
また、車体関連の進化も見逃せない。ニッサン/ルノーが共同開発した『CMF-B』と呼ばれる最新プラットフォームを採用したことで、シャシー性能が大きく向上し、先代に比べると乗り心地の快適性が上がり、高速走行時の安定感も高まった。
プロパイロットをはじめとした目玉装備がセットオプションになるため、ライバル勢と装備水準を揃えると実質的な購入価格が少し割高に感じるという弱みもあるが、洗練されたスタイリングや巧みな内装仕立てのおかげで、ひとクラス上のモデルに近づいた印象だ。
■購入ガイド:ニッサン・ノート編
車両価格帯:202万9500~244万5300円
■本命グレードは『X』。プロパイロットは“選ばない”選択もあり
ニッサン・ノートはe-POWER専用モデル。ガソリン車が選べた先代と比べるとスタート価格は大きく上昇した。目玉装備のプロパイロットは純正ナビゲーションとのセットオプション(約42万円高)になるため、実質的にフィット/ヤリスよりも少し割高だ。
新型ノートは、その価格高に見合うだけの進化を遂げているが、コンパクト2BOXはコスパの良さも重要な項目。ライバル勢に比べると割高感が否めない価格設定はどうしても目立つ。
新型ノートのグレードは『F』『S』『X』の3つで、FF車と新開発リヤモーターを搭載する4WD車を選ぶことができる。『F』と『S』は、プロパイロットが選べないため、『X』(218万6800円~)が事実上のエントリーグレードと考えていい。
発売ひと月で2万台を超える初期受注を獲得しているが、グレード比率は『X』が84.2%、『S』が15.6%、『F』が0.2%と、『X』の支持が圧倒的に高い。
新型ノートで最も悩ましいのは、プロパイロットを装着するかどうか。出来の良い純正ナビゲーションのセットオプションとはいえ、このクラスのモデルで約42万円の追加費用が必要になるのは厳しい。
発売ひと月の実績でプロパイロットの装着率は41%に留まるなど、新型ノートを購入した半分以上のユーザーはプロパイロットを省いた仕様を選んでいる。
もうひとつ、注目したいのが駆動方式。先代もリヤモーター式の4WD車が設定されていたが、小型モーターゆえに最高出力は3.5kWで多少のアシスト駆動が期待できるレベルだった。だが、新型ノートの4WD車には最高出力50kWの大型モーターを搭載。前後の駆動力制御まで対応する本格電動4WD車に進化した。
寒冷地に向けた生活四駆ではなく、オンロードでの安定性の向上も期待できるシステムのため、新型ノートの走りの魅力を高める選択肢でもあるのだ。
新型ノートの劇的進化ぶりを考えれば、プロパイロットを含めた“全部入り”が欲しくなるが、『X』はアルミホイールやLEDヘッドライトなどもオプション装備になるため、それらを追加していくと総額300万円を超えてしまうケースも……。
ニッサンの新世代モデルゆえにひとクラス上が狙えるこの仕様でも満足度は高いだろうが、ここまでは「出したくない」というユーザーもいるだろう。そんなニーズに対して提案したいのが、プロパイロット未装着のまま『X』を買う選択だ。
標準でプリクラッシュブレーキや車線逸脱防止などの安全系装備は手広くカバーしているため実用面で問題はないし、ナビゲーションやアルミホイールなどは、社外製品を含めた幅広い選択肢の中から自分が好きなアイテムを選ぶこともできる。
強力な運転支援機能を備えるプロパイロットは便利だが、これがなくても新型ノートに注がれた多くの魅力は十分に楽しむことができる。