ヒョンデの高性能ブランド“N”が、茨城県の筑波サーキットで2月15日に開催された『シバタイヤ presents Attack Tsukuba 2025(Attack筑波2025)』において、EV(電気自動車)の最速タイムを打ち立てた。
2022年の日本再上陸後、アイオニック5やコナ、インスターなどのEVを中心としたモデルラインアップを展開しているヒョンデだが、この韓国メーカーはモータースポーツにも積極的な姿勢を見せており、同社の高性能ブランド“N”は世界各地で行われているラリー競技やツーリングカーレースで存在感を放っている。
そんなヒョンデNは今回、筑波サーキットでのタイムアタックイベントにメーカーとして初参戦。新たなレコードタイムの樹立を目標に、同サーキットのトラックレコードを複数持つ谷口信輝をドライバーに起用し、『アイオニック5 N TA(タイムアタック)スペック』を託すこととなった。
“TAスペック”の最高出力は687PSだ。このクルマはソフトウェアチューニングによってリヤモーターの出力が37PS向上しているが、モーターやバッテリー、車体に根本的な変更は行われず、量産モデルの強みを際立たせる設計がなされているのが特長だ。
一方、足回りには新しいショックアブソーバーと18インチのADVAN 005スリックタイヤが奢られ、ボディのフロントエンドとリヤエンドにはダウンフォースを得るための巨大なエアロパーツを確認することができる。また車内には安全性を向上させるロールケージやセーフティハーネス、EV用消火システムなども装備されている。
アメリカの有名なヒルクライムイベント、PPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムで部門レコードを持つこのクルマと、筑波サーキットを知り尽くすベテランの谷口。“最速”と“最速”のコンビネーションに注目が集まるなか、果たして谷口駆るアイオニック5 N TAスペックは57秒446のラップタイムを叩き出し見事、EV新記録を樹立してみせた。
ライバルを約2秒引き離すタイムをマークした谷口は記録達成後、次のように語った。「他社EVで筑波サーキットのレコードを出したことがありますが今回、アイオニック5 N TAスペックに乗らせてもらって、これまでの記録を大きく塗り替えることができて非常に光栄です」
「軽量化されているとはいえ、車重が2トンあるので絶対的に重たいクルマです。それにもかかわらず非常によく止まり、よく曲がります。パワーがあるのに制御が素晴らしく、コーナーや立ち上がりも安定しています。非常に不安感なく攻めれるクルマでした」
Nブランドのパク・ジューン常務は、「この快挙はヒョンデの先進的なEV技術とコミットメントを示すものだ」と述べたうえで次のように続けた。「量産車両の部品を主に使用したアイオニック5 N TAスペックの新記録は、ヒョンデの技術力を証明する重要なマイルストーンであり、Attack筑波2025のようなイベントを通じて、高性能EVを世界の自動車文化に深く浸透させたいというヒョンデNの想いを表している」
さらにヒョンデ・モビリティ・ジャパンの七五三木敏幸社長はこう付け加えた。「Attack筑波2025でのこの記録達成を、私たちは大変誇りに思っています。この結果は、当社の技術力を証明するとともに、日本市場での存在感をさらに確かなものにしました」
ヒョンデNにとって大成功に終わった今回のAttack筑波2025では、会場内に『アイオニック5 N DKエディション』が展示された。今年1月に行われた東京オートサロン2025で初登場したこのクルマは、“ドリフトキング(ドリキン)”こと土屋圭市氏が監修したショーカーだ。
ヒョンデの高性能ブランドは、このDKエディションで採用した“Nパフォーマンスパーツ”パッケージを市販化し、アイオニック5 Nオーナーにさらなるオンロードおよびサーキット性能を提供することを目指すとしている。