一年に一度のビッグイベント、富士SUPER TEC24時間レース。ふだん撮影できない光の写真が撮影できるとあって、アマチュアカメラマンのみなさんも楽しみにしているイベントだろう。そこで、日本レース写真家協会(JRPA)会員で、長年ピレリスーパー耐久シリーズを撮影しているフォトグラファー、小笠原貴士氏に夜間も含む富士24時間の撮影のコツを聞いた。
まず富士スピードウェイには、アマチュアカメラマン向けの撮影ポイントがいくつかある。オススメはダンロップコーナーやレクサスコーナーの土手の上、アドバンコーナーなどだ。コカコーラ・コーナーは改修前に比べるとやや距離が離れてしまったので、焦点距離の長いレンズを持っている方でないと厳しくなっている。
ただ小笠原氏によれば「富士は日向きが難しいサーキットです」という。プロフォトグラファーの多くも気をつけていることだが、写真を撮ったときに日射しがきれいに当たる“順光”、逆に影になる“逆光”が出やすいサーキットなのだ。そのため、順光になる時間、逆光になる時間を正確に把握し、その時間帯に合わせて撮りに行くのがベストだ。
午前中は、ダンロップコーナーのアウト側から撮ってみたり、富士24時間の場合は早朝にダンロップコーナーイン側からバックショットで富士山を入れて撮ることも可能かもしれない。また、とかく写真を撮りはじめた頃はマシンに集中してしまいがちだが、背景を考えることも忘れずに。アドバンコーナーや、コカコーラ・コーナーのバックショットを狙うと、御殿場市内の街並みを入れた抜け感のある写真を狙える。
そして富士24時間で楽しみたいのが夜の撮影。近年のレーシングカーはヘッドライトの光量が非常に強いので、正面向きはただヘッドライトが写るだけの写真になってしまいがち。そこで狙いたいのは横走り(マシンの横を狙っての流し撮り)だ。
小笠原氏によれば、コツは「夜は水銀灯の光が、路面に落ちているスポットを探してください」という。その光に入ったときを狙って撮れば、その光がマシンを写しだしてくれる。絞りはどうしても開けざるを得ないが、「最近のカメラはISO感度を上げてもノイズが入りにくくなっているので、機種にもよりますが、ISO6400くらいまで上げても大丈夫です」という。
また、通常日中の際にはオートフォーカスを活用して撮影するが、夜間は性質上、オートフォーカスが迷いやすい。そのため、撮りたい場所にピントを合わせておく『置きピン』というテクニックが必要になる。「ぜひ置きピンの練習をしてみてください」とのこと。
オススメのポイントはいくつかあるが、意外なのがストレート。富士スピードウェイでは、グランドスタンドからストレートに向けてライトが当たっているが、この光をうまく使うとカッコいい流し撮りを撮影することも可能だ。
そして夜間にぜひ挑戦したいのがバルブ撮影。いわゆる長時間露光での撮影だ。この撮影にはまず三脚が必要になるので、富士24時間で撮りたい場合は今のうちからご用意を。「スーパー耐久の場合は、30秒ほどシャッターを開ければ十分だと思いますが、コーナー入口から出口までが入るようなアングルを狙うと、ブレーキランプの赤い線が入ってキレイです。スーパー耐久はグリーン等、いろいろな光が入るので、美しい写真になるのではないでしょうか」と小笠原氏。
富士24時間では花火も上がるが、アドバンコーナーを臨む土手の上から撮影することができる。ただ花火にシャッタースピードを合わせると、コース側の光量が足りなくなってしまう。そこでオススメしたいのが、黒い紙等でレンズの上半分をふさぎ、30秒ほど露光。花火の上がる瞬間に合わせて紙を外し、花火が消えたらまたふさぐ……というテクニックがあるというので、ぜひお試しあれ。
プロのフォトグラファーたちにとっても、富士24時間はふだん味わえない光をものにするチャンス。今年すでに開催されたJRPA写真展『COMPETITION』にも富士24時間の写真が数多く出展された。レースを楽しみながら、撮影もぜひ楽しんでみよう。