レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

国内レース他 ニュース

投稿日: 2021.03.02 13:28
更新日: 2023.12.07 17:11

耐摩耗性とのバランスでダブルスティントが見え隠れ。ハンコック導入に向けスーパー耐久が求めたもの

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


国内レース他 | 耐摩耗性とのバランスでダブルスティントが見え隠れ。ハンコック導入に向けスーパー耐久が求めたもの

 2021年から、ワンメイクタイヤサプライヤーがハンコックタイヤに変更され、シリーズ名も『スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook』と変わったスーパー耐久。2020年9月からハンコックのテストが行われており、2月27日に行われた公式テストでもエントラントからは非常に高い評価を得てきたが、導入までの過程とハンコックに求めるものを、スーパー耐久機構(S.T.O)の松崎穣テクニカルアドバイザーに聞いた。

 スーパー耐久はこれまでヨコハマ、さらに2018年からはピレリがワンメイクタイヤサプライヤーを務めてきた。ピレリとの契約は2020年までで、2021年に向けては、韓国ナンバーワンのタイヤメーカーで、市販タイヤで世界7位のシェアをもつハンコックがサプライヤーを務める。

 すでに2020年9月から参戦エントラントの協力を得ながらハンコックを装着したテストが行われており、2月7日には9月にテストをしていない16台が参加してスポーツ走行枠を使い、さらにフィードバックを得てきた。S.T.Oの松崎テクニカルアドバイザーによれば、2020年9月のテストから2月までの間に、タイヤには変更が加えられているという。

「まず最初に、ハンコックからスーパー耐久のタイヤを供給してもらう際にお願いしていたのは、耐摩耗性についてです」と松崎テクニカルアドバイザー。

「チームの運営コストを低減するために、タイヤの値段は(2020年までと)変わらないお約束を得ていたので、次に長持ちするタイヤを念頭において作ってもらうようにお願いしました」

 9月のテストでは、エントラントからは非常に高いグリップがあるという評価を得ていたが、スーパー耐久側が求める耐摩耗性については「足りなかった」状態だった。そこで、ハンコックとグリップと耐摩耗性のバランスを検討しながら、プランA、B、さらにスーパー耐久側で求める性能を盛り込んだ『プランC』のタイヤを作り、結果的に2月の走行でさらなるフィードバックを得て、プランCのタイヤが公式テストで使用され、高い評価を得ている。

 また今回、スーパー耐久がハンコックに求めたタイヤの狙いは非常に興味深いものだ。松崎テクニカルアドバイザーによれば、耐摩耗性について要求したのは、「チームがドライバー、エンジニアと協力して、ストラテジーとして上手に使ったら、2スティントの連続使用が見え隠れするタイヤを作ってほしい」というものだ。

「2スティント必ず走れるタイヤを作ってしまうと、全員がそうしてしまいますが、ピットストップのおおよその作業時間を周回数で割って、その分上にいくか、下にいくか面白くなるようなバランスを要求しています」

 レースでタイヤ交換の時間をうまく短縮し、なるべく高いラップタイムを保ちながら走ることができれば、順位で前に行くことができる。そういった戦略性を各チームにもたせることができれば、「観ている側も参加している側にしても、エンターテインメントコンテンツとして提供できるのかな、と思います」と松崎テクニカルアドバイザー。

 現段階ではその要求に対しては「ギリギリ及第点のところかと思いますが、グリップレベルは前年よりも高い印象があります。あともう一歩、ストラテジーの選択肢に関与できるレベルにもっていきたいです」という状況で、テストの際も多くのドライバーにフィーリングをヒアリングしているシーンが見られたが、楽しみな取り組みなのは間違いないだろう。

 また、ハンコック側には過去にスーパーGTでARTA BMW M6 GT3を手がけ、韓国のCJスーパーレースで、ハンコックワークスのアトラスBXチームから参戦した柳田真孝車を担当した安藤博之エンジニアが帯同しており、スーパー耐久側の松崎テクニカルアドバイザーとコミュニケーションをとっている。実はふたりは過去にセルブスジャパンでともに仕事をしたこともある仲だ。

「交渉にうまく繋がっています。ハンコック側に韓国語で話さなくても、タイムラグなく思いが伝わります。安藤さんも日本語がペラペラのスタッフが隣にいて、言葉の伝わり方も問題ないと思います。そこは今までのタイヤメーカーとは大きく違いますね」と松崎テクニカルアドバイザー。

「今までのタイヤメーカーは渡されたものを履くだけでしたが、すごく進歩があると思います。僕は2012年にスーパーGTでハンコックと仕事をして、そこでのイメージがありましたが、今はまったく違うイメージでした。お互いのマインドも当時よりも高いところにあると思います」

 ハンコックは2020年までDTMドイツ・ツーリングカー選手権のワンメイクタイヤサプライヤーを務めていたが、ここでも主催者がレースに求めるスペックのタイヤをうまく作り出しており、大きな信頼を得ていた実績がある。スーパー耐久でも新たなシーズンに向け、良い方向に進んでいきそうだ。

スーパー耐久公式テストで富士スピードウェイのパドックに設営されたハンコックのタイヤサービス
スーパー耐久公式テストで富士スピードウェイのパドックに設営されたハンコックのタイヤサービス
さまざまな車種が参戦するスーパー耐久。これらの対応も大きな問題なく進んでいる。
さまざまな車種が参戦するスーパー耐久。これらの対応も大きな問題なく進んでいる。


関連のニュース