全9クラスが競うスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookのなか、GT4マシンによって競われるST-Zクラスは、2018年のクラス創設以来、年々車種バラエティが増え、2021年第2戦『SUGOスーパー耐久3時間レース』には6車種、15台がエントリーしている。
不定期にお送りしている“スーパー耐久マシンフォーカス”。2021年シーズン第1回は、第1戦もてぎで1年ぶりの参戦を果たした『ジネッタG55 GT4』の特徴、特性をご紹介しよう。
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日本ではFIA-GT4というカテゴリーがまだ浸透していなかった2014年、イギリスのスポーツカーメーカー、ジネッタがデリバリーを開始したのが『ジネッタG55 GT4』だ。2021年シーズンのST-Zクラスを戦う7車種のなかで最も早い時期に製造され、スーパー耐久には2018年の最終戦岡山で初参戦を果たすなど、現在盛況を見せるST-Zクラスの創設初期を支えた1台でもある。
鋼管スペースフレームシャシーに、最大出力380馬力を発するフォード・マスタング用の3.7リッターV6エンジンを搭載し、車重は1085kgと軽い。登場時期が早かったこともあり、ここ1〜2年で登場したマシンたちとは大きく異なる印象だ。
さらに、ヒューランド製6速シーケンシャルギヤボックスを搭載しており、その姿は市販車というよりも純レーシングカーを思わせる。そもそも、このG55 GT4というマシンはロードカーが存在しない異色のGT4マシンなのだ。
「ホモロゲーションを取得するために何台かは製造したかもしれませんが、基本的にはロードカーでは販売されていないモデルとなります。『G55のロードカーが欲しい』と、よくお問い合わせをいただくのですが」
そう話すのはジネッタG55 GT4の輸入元であるモノコレ(有限会社NEOS)の阪直純代表だ。モノコレといえばレーシングギアや四輪・レーシングカートの用品の販売でお馴染みだが、イギリスの展示会に出展したことでジネッタとの縁ができ、2018年よりG55 GT4の日本における総輸入元として活動している。
日本に上陸を果たしたG55 GT4は当初、モノコレがエントラント、メンテナンスはモーラが担当し、2018年のスーパー耐久最終戦岡山で国内レースデビューを果たした。
翌2019年シーズンからは長年ST-3クラスの強豪として活動してきたテクノファーストとタッグを組んで参戦することとなったが、第1戦鈴鹿の占有走行で大クラッシュを喫し、修復が叶わずリタイアとなった。
次にジネッタがスーパー耐久に戻ってきたのは2019年シーズンの最終戦岡山。実戦の経験が少ないなかではあったものの、車重の軽さを活かしたタイヤ無交換作戦を成功させ、予選4番手から2位でチェッカーを受けた。今後の活躍に注目が集まる1台となっていたが、2020年シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてテクノファーストがレース活動を休止してしまう。
そして1年間の活動休止を経て、2021年シーズンの第1戦もてぎで再びスーパー耐久に帰ってきたのであった。
テクノファーストの市成聡監督は「よくできたクルマだと思います。GT4マシンなので、ダンパーも何もかもが最初から決まっており、その決められたなかでしかやれないというところが、ST-3クラスと比べると少し物足りない部分ではありますけど、これはこれでレギュレーションの範囲内でいかに速くするかというものなので、楽しくやってます」と語る。
「G55 GT4というクルマはとにかく軽いです。なのでタイヤの面で大きなメリットがあり、2019年の最終戦の岡山3時間レースもタイヤ無交換で走りきり、2位という結果を出せました。そういうところでのメリットがあるから面白いクルマですね。車重はだいたい1085kgなのですけど、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)の影響で1100kgちょっとになりますが、それでもほかのGT4マシンと比べると格段に軽いです」
BoPによりサーキットごとに毎回違う車重、車高となるが、2019年に参戦した頃よりもBoPで搭載されるウエイトは100kgほど軽くなり、車高も下げられている。さらに2019年には装着されていたリストリクターも外されたことから開幕戦もてぎではかなりいい手応えを感じたという。