初戦の好結果から一転、予選で苦しんだ第2戦。チームはそこで何を学び、活路を見いだしたか?
富士スピードウェイで開催された86/BRZレース第2戦。公式予選前日の練習走行から、チームは苦悩のなかにあった。初夏のような気候で路面温度が40℃近くにまで上昇し、当初のセットアップでは、佐々木孝太(906号車)、井口卓人(988号車)ともにタイムが出ない。
井口はコーナリングでマシンの向きを変えるタイミングが決まらず強めのアンダーが気になる様子だ。一方、佐々木は旋回性能が足りないマシンの改善策を見いだすべく、荒木メカニックと顔をつきあわせる。
エンジニアを置かないレカロレーシングチームでは、メカニックとドライバーが意見を出し合ってセッティングを煮詰めていく光景がしばしば見られる。
それだけにとどまらず、ふたりのドライバー、サポートメカ、そしてチームマネージャーである前口光宏氏を含めたスタッフ全員で直面するさまざまな問題を解決し、前へ進もうとする。
遠慮せずものを言える風通しの良さと密な意思の疎通が、今シーズンのチームに明らかな変化をもたらしたが、そこには佐々木の存在が欠かせなかった。佐々木の強みは、走りを徹底的に解析することで問題点や課題を見つけていくことにある。
走行中に自らのドライビングとマシンのセッティングに対して感じ取ったことを、ロガーデータと車載映像の情報に突き合わせ、そこから答えを導き出していく。さらにチームメイトのデータもチェックし、感覚だけに頼らない要望をメカニックへフィードバックするのである。
自分のため、そしてチームに関わるすべての人のために速くなりたい、そして良い結果を出したいと最善を尽くそうとする佐々木の真摯な姿勢が、チームに考えるきっかけをつくった。
「佐々木選手は、誰よりも自分の走りを徹底的に分析し、足りていないものをいつも探し続けている。結果に苦しみ、結果を求め続けてきたのが佐々木選手。チームがどんな状態であっても、このチームでいつも前を向いているのが佐々木選手」と前口氏。
「実績・経験豊富なプロのドライバーにもかかわらず、速くなるためなら、すべての人の声に耳を傾ける。また苦しい部分もすべてチームに発信してくれます。佐々木選手と一緒に勝ちたい。佐々木選手と一緒に強いチームをつくりたい。そう思わせてくれるのが佐々木選手です」
長年86/BRZレースに携わってきた荒木メカニックは、プロが走るマシンをトータルでマネジメントできるこのレース、そして全員が意見を出し合うなかでより良い方法を見つけていくこのチームの手法にやり甲斐を感じている。
そして、佐々木のドライビング技術とレースに懸けるひたむきさに惚れ込み、佐々木のイメージどおりに動くマシンに仕上げられるよう全力で応えようとしている。荒木メカニックをはじめ今年のチームには、レースを戦える強いチームをつくるため、ドライバーの声に耳を傾け、考え、思い悩み、そして自ら行動するのだという強い意思が生まれている。