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投稿日: 2022.02.26 13:55
更新日: 2022.02.26 13:58

前田育男常務執行役員に聞く、マツダのモータースポーツ活動。MAZDA SPIRIT RACINGとは


国内レース他 | 前田育男常務執行役員に聞く、マツダのモータースポーツ活動。MAZDA SPIRIT RACINGとは

 2021年、岡山県の岡山国際サーキットで開催されたスーパー耐久第6戦に突如として参戦を開始したのが、100%バイオマス由来の次世代バイオディーゼル燃料『サステオ』を使用した『MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO』。ORC ROOKIE Racingが2021年第3戦富士から投入したORC ROOKIE Corolla H2 conceptに続く、カーボンニュートラルに向けた新たな取り組みとして参戦した車両だが、この参戦に至るまでのいきさつや、そして参戦の際に掲げられたチーム名『MAZDA SPIRIT RACING』とはいったい何を指すのか、ドライバーのひとりとしてステアリングを握るマツダの前田育男常務執行役員に聞いた。

 前田常務執行役員は1982年にマツダに入社。2009年にデザイン本部長に就任し、2016年にはデザイン・ブランドスタイル担当の常務執行役員という役柄に就いた。2011年からマツダ車に採用される美しい『魂動』デザインを手がけた人物その人だ。そして一方で、ひとりのクルマ好き、モータースポーツ好きとしてレースにも参戦。2021年に突如登場したMAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO以前にもスーパー耐久には参戦してきた。

 マツダは2022年にも、『MAZDA SPIRIT RACING』としてスーパー耐久に参戦する。新たに車名は『MAZDA2 Bio concept』に変更され、TEAM NOPROと広島マツダが運営するHM RACERSのサポートを得ながらST-Qクラスに挑む。さらに、第3戦SUGOからは同じく『MAZDA SPIRIT RACING』としてロードスターを激戦区のST-5クラスに投入する。

 そんなシーズンを前に、2月23日に行われたスーパー耐久富士公式テストで、MAZDA2 Bio conceptも姿をみせ、前田常務執行役員もステアリングを握った。2022年を前に、『MAZDA SPIRIT RACING』とはなんなのか、そして1990年代後半以降、海外では活動があったが、日本のマツダ本体として実質的な活動がなかったマツダのモータースポーツ活動がどんな展開をみせていくのか聞いた。

2016年、マツダRX-VISIONが国際自動車フェスティバルで『Most Beautiful Concept Car of the Year』を授与され、前田常務執行役員が出席した。
2016年、マツダRX-VISIONが国際自動車フェスティバルで『Most Beautiful Concept Car of the Year』を授与され、前田常務執行役員が出席した。
2022年のスーパー耐久に参戦するMAZDA2 Bio concept(左)とロードスター(右)
2022年のスーパー耐久に参戦するMAZDA2 Bio concept(左)とロードスター(右)

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Q:まず読者のためにも、前田さんがふだんマツダで何を担当されているのかをご説明いただいても良いでしょうか。
前田育男常務執行役員(以下IM):
私はデザイナーなんです。デザインのリーダーとして、マツダ車のデザインすべてをコントロールしている立場です。最近はブランドスタイルも担当しています。

Q:近年マツダのディーラーはブラックを基調とした雰囲気となっていますが、そういったところも前田さんが手がけているのですね。
IM:
はい。そういったところも指揮しております。

Q:一方で、こうしてモータースポーツにも参加されていらっしゃいます。
IM:
これは趣味なんですけどね(笑)。趣味がだんだんと趣味でいられなくなってきたような印象もあります。

Q:2021年のスーパー耐久第6戦から、バイオディーゼル燃料のデミオが登場しました。どういったいきさつだったのでしょうか。
IM:
実はスーパー耐久に出ようという計画は、ずっとここ数年間練っていたんです。『MAZDA SPIRIT RACING』というチームとして出ようと準備はしていました。そんななかで、『カーボンニュートラルに向けた選択肢を増やそう』というモリゾウさん──トヨタ自動車豊田章男社長のかけ声があり、『じゃあ、我々はいちばんにチャレンジしよう』とバイオディーゼル燃料を使うデミオを仕立て参戦しました。本来であれば2022年からきちんとやろうと思っていたのですが、それが早まったかたちですね。

Q:急遽参戦が実現したという意味では、ずっとスーパー耐久に挑戦していたTEAM NOPROのノウハウがあったのは大きかったのでしょうか。
IM:
それはすごく助かっています。やはりTEAM NOPROさんがディーゼルエンジンでスーパー耐久に出場していなかったら、おそらくこれほどの短期で実現するのは難しかったと思います。参戦まで2ヶ月くらいしかなかったですからね。

2021スーパー耐久第6戦岡山 MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO
2021スーパー耐久第6戦岡山 MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO
スーパー耐久第6戦岡山のST-Qクラスに登場したMAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIOと4人のドライバーたち
スーパー耐久第6戦岡山のST-Qクラスに登場したMAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIOと4人のドライバーたち

■関わる人たちの心を繋ぐ、新たなネームプレートに

Q:その参戦発表の段階で気になっていたのが、『MAZDA SPIRIT RACING』というチームの名称です。昨年の参戦時調べたところ、以前(2021年2月)から商標として登録されていたそうですが。
IM:
おっしゃるとおりです。将来はブランドにしていきたいという思いがあります。マツダはしばらくモータースポーツをやっておりませんでしたので、そのモータースポーツを柱とするようなブランドを作りたいという思いがあったんです。
 僕がデザイナーということもあり、まずはとにかくネーミングとロゴから入らなければならないと思いました。しかも商標はとるのには時間がかかります。なのでかなり早くから登録をしたのですが、いろいろなところで話題になり、逆に驚きました。コソっと出しているだけだったんですけどね(笑)。

Q:ロゴは“レーシング”の『R』を象っていると思うのですが、どういった意味合いがあるのでしょうか。
IM:
『R』の文字に加え、この丸が地球を表しています。その地球のなかに、“レーシングの火”を灯し続けたいな、という思いがあります。モノトーンでも使用しますが、三角の部分がレッドなんですね。これが灯火(ともしび)を表していて、そんなメッセージを込めています。

Q:『MAZDA SPIRIT RACING』という名称についてはどんな意味合いがあるのでしょうか。
IM:
マツダらしいモータースポーツのあり方は、おそらくですがすごい投資をして、トップカテゴリーにバンと出るというスタイルではなく、作っている人たち、出場している人たちの心を繋いでいくスピリットでモータースポーツを盛り上げていく……という思いがあります。そういった意味では、マツダらしい、マツダのスピリットを感じてもらいたいというメッセージがあります。

Q:マツダと言えば、我々としては『マツダスピード』というブランドが印象深く残っています。そのブランドを使わない選択の理由はなんでしょうか。
IM:
当然、『マツダスピード』を使うというオプションもありました。ただマツダスピードがレース活動を止めて、30年ほど経っています。ブランクもありますし、過去のネームプレートの“復活”というかたちにはしたくなかったんです。新しいブランドを立ち上げたかった。『マツダスピード』というきちんとしたネーミングがあったので、もったいなかったんですけどね。そして敢えて今回、『スピリット』という言葉を入れたかったんです。マツダスピードと同様、スピードを追求するのはもちろんなのですが、もう少し人に近い、新しいネームプレートであるという意味を込め『MAZDA SPIRIT RACING』と名付けました。

Q:では今後、『MAZDA SPIRIT RACING』という活動はマツダのワークス活動にあたるのでしょうか。今のお言葉をうかがうに、どちらかというとグラスルーツの活動にあたる印象を受けましたが、どういった場合に使われるのでしょうか。
IM:
たしかに我々がベースとしているのは、グラスルーツのモータースポーツなので、トップカテゴリーにドンと出るというより、グラスルーツで汗を流してやってくれる仲間と一緒にこのブランドを作っていきたいという思いがあります。ワークスではあるのですが、ある意味でクラブ活動のようなところから、活動の重みや領域を一歩一歩広げていきたいと思います。

Q:北米では独自にマツダのモータースポーツ活動が行われてきましたが、今後、グローバルに『MAZDA SPIRIT RACING』としての展開もされていくのでしょうか。
IM:
そうですね。グローバルにそういった人たちがたくさんいますが、パイプがないので繋がっていないんですね。それを繋げる役目をしたいと思っています。この『MAZDA SPIRIT RACING』というネームプレートを使ってもらい、いろんな人たちがグローバルに繋がればと思いますし、繋げる仕掛けのようなものも今後展開していきたいですね。

優勝車と6.5秒差の総合3位でチェッカーを受けた55号車マツダRT24-P
2021年デイトナ24時間で優勝車と6.5秒差の総合3位でチェッカーを受けた55号車マツダRT24-P

■“マツダらしいモータースポーツのあり方”を追求へ

Q:北米ではマツダのモータースポーツ活動は根強く続いていましたが、日本ではこの30年ほど、マツダ本体としてモータースポーツ活動を行っていませんでした。今後、グラスルーツを中心にモータースポーツを展開していくのでしょうか。
IM:
はい。展開していきたいと思っています。スーパー耐久もそうですが、モータースポーツはいわゆる『走る実験室』であり、『走る広告塔』でもあります。こういった活動を行うことで、すごく社内のメンバーも活性化してきていますし、技術もおそらく量産に活かされていくと思います。そういった繋がりづくり、スキームづくりをしていきたいと思います。

Q:2021年の参戦時はデミオでしたが、2022年から、フロントフェイスが現行の『マツダ2』のフェイスに変更されました。
IM:
やはりマツダの最新のモデルにしないといけませんので。2021年の岡山では時間もなく、そこまで気が回りませんでしたが、今回はきちんとアップデートしていこうということですね。中身についても、今後少しずつグレードアップをしかけていこうと思っているので、そのあたりも期待していただければと思います。

Q:2022年も前田さんがステアリングを握って参戦されるということですが。
IM:
『まだ握ってもいいよ』と言ってくれるので(笑)。『ジャマだよ』と言われるまではもう少し握ってみようかと思っています。

これからマツダらしいモータースポーツのあり方を追求し、提案していきたいと思っておりますので、ぜひ楽しみにしていただきたいと思いますし、応援していただければと思います。その応援に支えられた活動にしていきたいですね。

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 1990年代以降、日本ではサーキットでマツダ車、そしてそのロゴを見かけることは極端に減っていた。しかし、今も30年前までに築き上げたマツダのサーキットでの活躍、サウンドは世界中のクルマを愛する人たちの記憶に残っている。

 そして2022年、『MAZDA SPIRIT RACING』という新たなブランドとともに、マツダがマツダとして、サーキットに戻ってくることが宣言された。もちろん、MAZDA2 Bio conceptがつけるカーナンバーは、1991年にル・マン24時間を制した787Bがつけた『55』だ。2022年のスーパー耐久、今後の活動の広がりを、大いに楽しみにしたいところだ。

スーパー耐久富士公式テストを走るMAZDA2 Bio concept
スーパー耐久富士公式テストを走るMAZDA2 Bio concept
1991年のル・マン24時間を制したマツダ787B
1991年のル・マン24時間を制したマツダ787B


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