ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。レギュレーションが大きく変わった今年の新F1で、創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、リアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの第3回目をお届けします。
ハース躍進のサプライズとマグヌッセンの焦り
体にキツイ、現代のF1の醍醐味
2017年シーズンが開幕しました。レギュレーションが大きく変わったことでマシンのグリップ力は高くなり、スピードも速くなりました。ドライバーにとってはフィジカル面がより試されることになり、体にキツイ“昔のF1”が少し戻ってきた感じがします。
たとえば、メルボルンのターン5は全開走行になりましたし、予選での最高横Gもなんと7Gを超えています! これは半端な数字じゃないですよね。高速シケイン(ターン11−12)のオンボード映像では、走行中のドライバーの首がGで左右に激しく振られているシーンが映っていたと思いますけど、彼らが本当にすごい世界で戦っているんだということが分かってもらえたのではないでしょうか。
そうした状況をテレビを通して知ってもらえることは、F1にとって良いことだと思います。80年代のF1はオンボードを見ているだけで大変だなって誰にでも判りましたけど、近年のF1は判り難かったですからね。
僕たちのチームに目を向けると、オーストラリアGPの結果は2台ともにマシントラブルでリタイアに終わりました。予選でロマン(グロージャン)が6位を獲得する速さを見せられただけに、とてももったいなかったです。
ウインターテストを終えた時点の感触では、マシンの速さ的にウイリアムズは僕らよりも少し前にいて、当面の敵はフォース・インディア、トロロッソ、ルノーだと考えていました。実際、開幕戦の予選でQ1を終えた時にはルノーのニコ・ヒュルケンベルグが5位、フォース・インディアのセルジオ・ペレスが6位、ウイリアムズのフェリペ・マッサが7位につけていて、ロマンは10位。Q3進出へのバトルはやはりとても拮抗していると認識ました。