2025年F1第13戦ベルギーGPのレース後の取材をしようとミックスゾーンで角田裕毅(レッドブル)の取材待ちをしていると、ミックスゾーンの外に角田のレースエンジニアを務めるリチャード・ウッドがいた。
通常レース直後は、エンジニアはそのレースを振り返りながら反省会を行う。翌日の月曜日から仕事が始まるファクトリーにいるスタッフたちが、次のレースへ向けてどんな準備を行うべきかを決めるためだ。
ところが1時間20分遅れでスタートした今回のベルギーGPは、その日のフライトまでの時間がタイトとなったため、赤旗中断中にレース後に予定していた反省会はキャンセルされた。
レース後、ドライバーはパルクフェルメから体重測定を行うために国際自動車連盟(FIA)の車検室へ直行。その後、ミックスゾーンへ向かうため、フィジオと担当の広報スタッフしか、ドライバーと接触することはない。オーストリアGPのリアム・ローソンのレースエンジニアのように、稀に待ちきれずにミックスゾーンへやってきて、ドライバーを直接祝福することもあるが、それは異例。エンジニアがドライバーと直接会うのは、メディアの取材が終わった後のミーティングとなる。
ミーティングがなくなったため、ベルギーGPでレッドブルのエンジニアはドライバーに会う機会を失うこととなった。しかし、ウッドにはサーキットにいる間にどうしても会いたい人物がいた。それが角田だった。
理由はピットインの指示を巡ってコミュニケーションミスがあったからだ。ウッドが待っているのに気がついたレッドブルのSNSスタッフがミックスゾーンのなかにいる角田担当の広報にメッセージを送り、担当広報がテレビのインタビューを受けている最中にそのメッセージを確認していた。
この段階でテレビのインタビュー後に予定されている記者用のインタビューが英語のみになることが予想された。
予想通り、英語のインタビューの後に予定されていた日本のメディア向けのインタビューは中止となり、広報が角田をレッドブルのガレージ裏へ行くよう促す。角田が向かう先にはパフォーマンスエンジニアのリチャード・クックがいて、さらにその奥にうつむいて待っているウッドの姿があった。
近づいてくる角田を直視できないほど、ふたりは落ち込んでいた。その様子を察したレッドブルのSNS担当のスタッフも、録画するのを中止し、角田を追うのをやめるほどだった。
緊急会議は、クックも席をはずし、ウッドと角田のふたりだけで行われた。時間にして1、2分間。レッドブルのガレージ裏にメディアセンターへ行く階段があったため、その階段を登りながら、その様子をうかがうことができた。それはまさにお通夜のような状態だった。
そこでいったいどんな会話があったのか。詳細は知る由もないが、側から見ている限りでは、角田はほとんど無言で、ウッドだけが語りかけていた印象だった。
もし、ウッドが素直に自分の非を認めて謝罪していたなら、まだ救いはある。しかし、もしも少しでも言い訳していたとしたら、もう未来はない。


