メキシコGPに向かう前、ホンダは「相当、厳しい戦いになる」(中村聡チーフエンジニア)ことを覚悟していた。なぜなら、メキシコGPが行われるエルマノス・ロドリゲス・サーキットがあるメキシコシティは、標高2250メートルという高地にあるため、通常の平地のサーキットに比べると約20%空気が薄いからだ。
気圧の低さを補うため、どのパワーユニット・マニュファクチャラーも、いつもよりたくさん空気を取り込もうと、ターボの仕事量を通常よりも増やす処置をとった。
だが、そうなると、今度はターボやMGU-Hの回転を通常よりも上げなければならず、通常のグランプリよりもターボやMGU-Hが厳しい状況にさらされた。ルノー勢が相次いでトラブルに見舞われた背景には、そんな理由が考えられる。
ホンダも不安はあった。
「昨年はそのへんを見越してターボやコンプレッサーが設計していたんですが、今年はターボとコンプレッサーのブレード(羽)のデザインが変わったため、通常よりも20%多く空気を取り込もうとすると、ターボを非常に高い回転域で使用しなければならなくなってしまった。その回転域というのは、信頼面に関して保証できないレベルとなっていたため、制限して使用するしかないと、あきらめていた」と中村チーフエンジニアは語っていた。
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