F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。レッドブルRB14のサイドポッドやフロントサスペンションなど気になる部分をピックアップ。
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・レッドブルよ、お前もか
これまで発表されたニューマシンは今回のレッドブルも含め、いずれもサイドポッドに大きな変更を加えている。しかも揃いも揃って、フェラーリのSF70Hの模倣と言っていい。
それほど昨年のフェラーリのモノコックデザインは、ライバルたちに大きな衝撃を与えたということだろう。
その特徴は2本あるサイドインパクトバーのうちの1本の位置を、下げたことにある。サイドポンツーン基部にあるバーはそのままだが、上部のバーは空気取り入れ口の上端と同じ位置まで下げられた。その結果、ハロの装着によって上がった重心が、ある程度下がる効果は出ているはずだ。
RB14に関しては、開口部の面積もかなり小さくすることに成功している。開口部が小さくなればなるほど、その下部の空間(青い矢印)を大きく取ることができる。もともとレッドブルマシンの空気取り入れ口はコンパクトなデザインだったが、今回はさらに小さくなった。
この空間はマシンの空力効率を考える上で、非常に重要な領域である。マシン前方から流れて来た気流が、サイドポッド周りを迂回してリヤへと抜けるポイントとなるからである。
RB14はサイドポッドのいっそうのコンパクト化と下端の位置を上げたことで、モノコック周りの気流をいっそう滑らかに、そして当初の勢いを大きく損なうことなく、リヤへと流せるようになった。カウル表面からの気流の剥がれが少なければ少ないほど、より多くの整った流れがリヤエンドのディフューザーへと流れ、強大なダウンフォースを生むことになる。
・もはやサイドポンツーンは存在しない?
昨年型のフェラーリを模倣したかに見えるRB14だが、レッドブルらしい独創性も健在だ。サイドポンツーンがないかと思えるほど、マシン両側の膨らみが小さいのである。
普通この部分は、ラジエターが存在を大きく主張している。ところがRB14は写真で見るように、平坦といっていいほどボリュームがない。断面図は、ほとんど三角形。かつてのRB6、あるいは1991年のランボルギーニを思わせる形状になっている。
マシンリヤへの気流の流れは、ここでも非常に良好であろうことが想像される。昨年のRB13も極限まで空気抵抗を減らすことを目指したマシンだったが、風洞とのデータ整合に失敗して本来の性能を発揮できなかった。しかしエイドリアン・ニューウィはそのコンセプトの実現を、決してあきらめていないようだ。
・類似点と相違点
それどころかRB14は、RB13の考えをかなり過激に突き詰めている。昨年のレッドブルマシンも、相当にサイドポンツーンは絞り込まれていた。しかし今季型をハースやウイリアムズの新車と比較してみると、後者2台と開口部のデザインは似ているにもかかわらず、その後方の湾曲の仕方はまったく違っている(黄線で表示)。
レッドブルのマシン同士でも、昨年型とニューマシンでは、その違いは顕著である。