F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。車高の一定化させるためのリヤサスペンションの工夫など気になる部分をピックアップ。
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(1)不動不変の基本コンセプト
昨年型W08はロングホイールベースと、ほぼ水平な車高が特徴だった。これは空力責任者マイク・エリオットの手になるもので、彼はロータス時代の2012、13年にも同コンセプトのマシンを送り出している。
W08のホイールベースは、フェラーリより14cmも長かった。その目的はふたつ。レーキ角を付けなくとも、ディフューザーの性能を目いっぱい発揮すること。そして空力デバイスをできるだけ多く加えるための、スペース確保だった。とはいえホイールベースを伸ばすと、特にシーズン序盤の重量増加は避けられない。そうするとライバルチームほどにはバラストが自由に付けられず、それが結果的にピレリタイヤをうまく持たせられないことにも繋がった。
それでもメルセデスは、今季のW09もキープコンセプトで行くと決断した。15ポール、12勝を挙げたマシンなのだから、当然の判断と言っていいだろう。ただしホイールベースをシーズン中に変えるのは非常に難しいのに対し、レーキに関してはその限りではない。実際メルセデスは昨年終盤、何度かトライしている。おそらく今季も状況次第では、再びレーキを試すと思われる。
一見しただけでは去年型に非常によく似たW09だが、たとえばサイドポッドはかなり絞り込まれている。マシン両脇を流れる気流を、さらに最適化する努力の一環である。
(2)フロントサスペンション
昨シーズン序盤のメルセデスは、予想外の苦戦を強いられた。彼らがアドバンテージを持っていたトリックサスペンションを禁止され、それによってマシン挙動が一気に不安定になってしまったからだった。空力性能を100%発揮するためには、車高変化ができるだけ少ない方がいい。
その状況は今年も変わらないが、フロントサスペンションを見る限りは、去年との差異はほとんど認められない。ジオメトリーは同じだし、アッパーアームの車体側取り付け位置も、去年同様モノコックよりわずかに高い(赤矢印)。
ホイール側のピボットが湾曲して接続されているのも、W08と変わっていない。すでに紹介したように昨年のトロロッソSTR12、そして今季では今のところレッドブルRB14、ザウバーC37が同じ手法を採用している。