F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。今季からルノー製PUにスイッチしたマクラーレンMCL33をチェック。
(1)ルノーV6とのマッチング
パワーユニットに関する技術レギュレーションは、各ユニットのサイズやシャシーへの取り付け位置などを厳しく規制している。とはいえメーカーによって、構造やレイアウトはかなり違っている。なので去年までのホンダからルノーへの変更が、マクラーレンにとって決して簡単な作業でなかったことは容易に想像できる。
テクニカル・ディレクターのティム・ゴスは、その困難さをこう説明している。
「F1のパワーユニットには、2グループが存在する。コンプレッサーをエンジンの前、ターボを後ろに置き、MGU-HはVバンク内部に収めるメルセデスとホンダ。そしてターボとコンプレッサーは共にエンジン後部で、MGU-HはVバンク内部というフェラーリ、ルノーグループだ」
「ホンダからルノーへの変更が、大きな負担になることは最初から覚悟していた。ルノーにしたことのメリットは、エンジン本体を前方に移動できたことだ。一方でコンプレッサーが後ろに来たことで、エキゾーストを前方に持っていかなければならなかった。全体パッケージは、そのままにね」
「そのためシャシー後部は、すべて設計を見直したよ。ギヤボックスのケーシング、リヤサスペンション、冷却システム、すべてだ。とはいえパワーユニット変更はずいぶん前から予想されていたので、ある程度の準備はしていた。実際の作業は、2週間ほど集中して行って完了した」
(2)冷却にさまざまな工夫
MCL33のサイドポッド開口部は、前年型より明らかに小さい。一方で去年のフェラーリが先鞭を付け、今季レッドブルやウイリアムズ、ハースが追随したサイドポッドを高くする手法は採っていない。とはいえ開口部自体はレッドブルのそれと同じくらいコンパクトになっており、マクラーレンの冷却システムの効率化はいっそう進化していると考えていいだろう。
(訳注:この記事は新車発表時のもので、バルセロナテストで冷却トラブルに見舞われる前だった。後述するエアインテークもそうだが、空力効率を重視するあまり、マクラーレンが冷却を攻め過ぎていたことがよくわかる。)
驚くべきは、ドライバー背後のエアインテーク下にあった二つの細長い穴が消えていることだ(黒矢印)。ハロの導入で乱流が増える分、できるだけ開口部を減らそうと思ったのだろう。
サイドポンツーン上部には、2列に並んだミニウイングが付いている(白矢印)。前輪が巻き起こす乱流を遠ざけると同時に、車体からの気流を防ぐ目的と思われる。