MGU-Kが機能停止するというトラブルにトラブルに見舞われたとき、コクピットの中でダニエル・リカルドは「目を閉じて泣き出したい気持ちになっていた」ことを明かした。
その表現が決して大げさではないことは、レース後のクリスチャン・ホーナー代表の言葉が物語っている。
「トラブルをエンジン部門のスタッフから聞かされたとき、われわれの信頼性に関するエンジニアが『今後のレースでペナルティを受けるリスクを考慮し、コンポーネントを温存するためにリタイアする選択肢もある』と言ってきた。そのスタッフによれば、『MGU-Kから大量の金属片を摂取しそうになっているのでエンジンを止めるべき』と言う。でも、私はエイドリアン(・ニューウェイ)とも相談し、彼も完全に私に同意してくれた。それはレースを続けること。止まったら止まった時だ、と」
MGU-KのトラブルがICE(エンジン)にも影響を及ぼしかねないことは、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターも認めている。
「トラブルの状況にもよりますが、MGU-Kが電気的な問題で動かなくなったのなら、そんなにダメージはないと思いますが、もしハードウェア的に何かが壊れたのなら、金属片が飛散するので、ICEにもダメージが広がるでしょう」
つまり、リカルドはMGU-Kのトラブルで、運動回生エネルギーシステムによるパワーを25%失っていただけでなく、いつエンジンが壊れても不思議ではない状況の中でレースを戦っていたわけである。
あるエンジニアは「そんなことはにわかには信じられないが、もしかするとレッドブルはMGU-Kに問題が起きたときの対応法を構築しているのかもしれない」と、今回のリカルドの優勝が単なる運ではない可能性を示唆していた。