2018年F1第7戦カナダGPは土曜日から完璧にマシンをまとめ上げ、フェラーリのセバスチャン・ベッテルがポール・トゥ・ウィンを飾った。F1ジャーナリストの今宮純氏がカナダGPを振り返り、その深層に迫る──。
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フェラーリ一色、コース上も満員のスタンドもあざやかに染まったカナダGP。5年ぶりの独走スタート・トゥー・フィニッシュ、完勝したベッテルは言った。
「今日は朝から40年前にジル・ビルヌーブ、14年前にミハエル・シューマッハーが勝ったのを思い起こしていたんだ」
観客たちもそうだっただろう。この3年間メルセデスのルイス・ハミルトンがPPウイン、その前も3勝と現役最多6勝を見せつけられた。目当てのフェラーリはずっと脇役のままでしかなかった。
毎年30万を超えるファンが続々サーキットにやってくる。レジェンドであるジルとフェラーリへの思い入れがあるからだ。その熱情はモンツァのティフォシに勝るとも劣らない。
ジルが初開催のここで初優勝したのは1978年晩秋の10月8日。表彰台に立つ小柄な彼をトルドー首相は両手でがっちり握手して称えた。市民ばかりかカナダ国民を代表するファンのように……、これが『ビルヌーブ伝説』の始まりだった。
それから40年、スタンドは金曜から盛り上がっていた。だがベッテルはFP2トップのマックス・フェルスタッペンに0.787秒遅れる5番手。新PUを投入したのに旧PUで戦う2番手キミ・ライコネンにも0.657秒及ばない。ブレーキングに切れがなく、コーナリングもウォールすれすれまで攻められない。マシンが信頼できず、リズムにのれない(つくれない)のが見てとれた。