F1の開発競争は、例年とは少し違った状況の中で夏休みを迎えている。どのチームも、今年のクルマの開発の継続と、大幅にルールが変わる2017年に向けての作業のバランスを見極めようと腐心しているからだ。空力依存度の高いシルバーストンでのレースと、その直後のテストセッションでは、これに関する各チームのアプローチのヒントが、数多く見られた。誰もがリソースを限界まで使いきっているこの時期に、どのチームがどんなことに取り組んでいたかをまとめてみた。
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■メルセデス:エアロとERSの冷却に重点
メルセデスの最新仕様のリヤウイングは、トロロッソが開幕から採用しているコンセプトに追従したもので、外観上の特徴はエンドプレート前側にあるドラッグ軽減用のルーバーだ。
これをさらに進化させて、メルセデスはルーバー前端が閉じておらず、翼端板外側に4つのストレーキを追加したものを持ち込んできた。ルーバーを「オープン」にしたのは、エンドプレート前端で気流が分かれてしまうのを防ぐことで、小さなゲインを狙ったものと思われる。
また、彼らは例の複雑な形状のバージボードの改良も続けている。シルバーストンでは、ベーンの枚数が減らされるいっぽうで、形状はさらに手の込んだものになり、ベーンの間のフロア前端にスロットを設けて、アンダーフロアの空力効果を高めようとしていた。
ディフューザー周辺に手が加えられたのも、このフロア前端の改良と関連したものかもしれない。リヤまわりでは、クラッシャブルストラクチャーの下のセンターフラップと、ディフューザーの外縁部の形状が変更されている。
エンジンカバー後部のバルジが変わったのは、メルセデスが昨年と同様に、シーズン途中でERSの冷却の改善を試みたことを意味している。このバルジの中には、ギヤボックスの上にマウントされたERS冷却用の放熱器がある。つまり、放熱器のサイズが大きくなったために、ボディワークの形状変更が必要になったのだ。
ERSをよく冷やしてやれば、信頼性が高まるだけでなく、エネルギー回生能力も高まる。また、熱の発生によって、効率が低いハーベスティングモードへの切り替えを強いられるような状況も生じにくくなるだろう。
サイドポット全体の形状もわずかに変わっており、「脇腹」部分の傾斜を深くして、コークボトルエリアをさらにスリムに絞り込んできたようだ。
この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています