フランスGPのレース後、レース審議委員会から帰ってきたエステバン・オコンは、エンジニアリングルームに消えた。数分後に出てくると、モーターホームにある自分の荷物を持って、すぐにサーキットを後にした。
「事故については、もう何も言いたくない。すでに終わったことだから……」
その複雑な表情から、この日のレースで起きたアクシデントがいかに精神的に深刻なものだったのかが想像できる。なぜなら、オコンが3コーナーでクラッシュしたピエール・ガスリーとは、ともにフランスのノルマンディ出身で、家族ぐるみで付き合う間柄だったからだ。
同じ1996年生まれの2人。急速に接近するようになったのは、ゴーカートがきっかけだった。オコンがゴーカートしているカート場を訪れたガスリー。当時はサッカー少年だったガスリーにオコンの父親はこう言った。
「エステバンのゴーカートに乗ってみないか?」
サッカー少年が、カート少年に変わった瞬間だった。
こうしてお互いレースの世界に足を踏み入れていくのだが、四輪に入ってからは、不思議なことに同じカテゴリーで全面的に対決することはほとんどなかった。
その後、オコンはメルセデスの育成ドライバーとなってGP3チャンピオンとなった後、マノーからF1デビュー。一方、ガスリーはレッドブルのジュニアチームに入ってGP2(現在のFIA F2)を制した後、日本のスーパーフォーミュラを経験した後にトロロッソからF1デビューした。
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