前戦イギリスGP予選の直後にエナジーステーションで開かれたトロロッソの記者会見で、ピエール・ガスリーが「僕たちは、ここの予選で0.9秒を失っていた」と、珍しくマシンの戦闘力に対して不満をぶちまけた。
その後、この「0.9秒」はさまざまな形で報道され、ひとり歩きしているので、ここでその情報を整理し、分析してみたい。
まず、「だれ」に対して、0.9秒失っていたのか、だ。イギリスGPのガスリーの予選タイムは1分28秒343。ここから0.9秒を引くと1分27秒443となり、同条件のQ2だとハースの2台が最も近いタイムとなる。しかし、ガスリーは「フォース・インディアとザウバーに対して語ったものだった」と明言している。
だが、Q2でのシャルル・ルクレールのタイムは1分27秒790。フォース・インディアはエステバン・オコンが1分27秒843で、セルジオ・ペレスは1分27秒928だった。つまり、Q2での差はルクレールに対し約0.6秒、ザウバー勢とは約0.4~0.5秒だった。
これはガスリーの「0.9秒」発言が1周あたりではないからだ。では、どこで失ってたのか?
それは『ストレート区間』だ。
「GPSデータを見れば、コーナーでは僕たちは彼らよりも速い。でも、ストレートで0.9秒も負けている。これでは戦えない」とガスリーは語っている。
現在のF1のパワーユニットに10馬力あたりのタイム感度は、1周あたり約0.2秒。0.9秒遅いということはメルセデスやフェラーリ約45馬力劣っていることになるが、それは1周の話でガスリーが言うように、ストレート区間だけで、0.9秒遅いとなると、その差はさらに広がることになる。
ただし、タイムはドラッグ(空気抵抗)やトラクションのかかり具合によって異なるため、タイムだけで単純に馬力を比較できない。同じパワーユニットを搭載していてもラップタイムがチームによって異なるのは、それが理由だ。