フェラーリはハンガリーGPで、同社製パワーユニットのユーザーチームにのみ新スペックを搭載させた。ワークスチームに導入されるのは、夏休み明けのベルギーGPと予想される。
これよりひとつ前のスペック2導入の際も、フェラーリは同じやり方をしていた。まずモナコでハースとザウバーに新スペックを使わせ、次戦カナダでセバスチャン・ベッテルが同じものを搭載した。これはもちろん、ユーザーチームによる実戦テストの意味合いが強い。
フェラーリ製PUをめぐってはメルセデスのトト・ウォルフがドイツGPで、「われわれよりストレートだけでコンマ5秒速い」と発言し、大きな話題となった。ところが不思議なのは、すべてのストレートでいつもフェラーリが速いわけではなく、あるストレートに限ってもフェラーリの速度の伸び方は独特なのである。
ドイツの『アウト・モーター・ウント・シュポルト』誌は先日、ホッケンハイムのターン2立ち上がりからターン6フルブレーキングまでの全開区間の、全20台のGPSデータを公表した。
それによれば全長850mのこの区間において、最初の200mでは特に大きな変化はない。それが時速225kmを越えた地点から差が出始める。
フェラーリとメルセデス、そしてフォース・インディアが、他の7チームに先んじるのだ。さらに時速250kmに達すると、突然フェラーリSF71Hだけがライバルたちの前に出るのである。そして最後の50mで、他車がようやく追い付いて行く。
フェラーリのストレート後半からの加速は、ライバルたちをかなり驚かせている。「確かにかなり奇妙だ」と、ルノーのシリル・アビテブールは言う。
「奇妙=不法というわけではないが、それにしても変わっている。一般的には回生エネルギーを放出するのは、ストレートの立ち上がりだからだ。タイムを稼ぐにはそこでフルパワーを出す。言い換えればできるだけ速い段階で最高速に達するのが、最良の方法のはずなんだ」
一方、ルノーのパワーユニット部門を統括するレミ・タファンはこう説明する。
「ドライバーがスロットルを全開にする段階で最大のエネルギーを利用できるよう、われわれはエネルギーマネジメントを考えている。なので長いストレートの後半では、時にエネルギー切れを起こすこともある」
「そのためドライバーはその辺りでスロットルを緩めたり、あるいはMGU-Kを切ったりする。ところがフェラーリは、そんな定石とはまったく違う加速のしかたをしてることになるね」