トロロッソ・ホンダの初年度となった2018シーズンを、ホンダF1の副テクニカルディレクターを務める本橋正充が振り返る連載企画の最終回。本橋は、トロロッソとはお互いに敬意を持って良い関係を築いて仕事ができたと語りつつも、チームが優勝するためには「まだ何かが欠けている」と指摘した。
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復帰後4年目のシーズンとなった2018年、ホンダは2度パワーユニット(PU)をアップデートした。最初は6月の第7戦カナダGPに投入された『スペック2』で、もう1回が9月の第16戦ロシアGPに登場した『スペック3』だ。それぞれPUの特徴とその使い方に関して、本橋は次のように解説した。
「まずアップデートする前のスペック1について説明すると、これはコンサバ(保守的)な仕様になっていました。その理由は、昨年まではかなりの頻度でPUに不具合が発生したために、PU交換によるペナルティが科せられていました」
「コンマ数秒を競う戦いをしている中で、グリッド降格ペナルティを受けるというのは、現場で仕事しているスタッフにとっては非常にインパクトが大きいのです」
「また開発側にとっても、トラブルに対処することで開発のスピードが落ちたり、対処している間はなかなか次のアップデートに踏み切れないという別の意味でマイナス面が出てきます」
「さらにトロロッソとは2018年シーズンから組んだので、トロロッソの車体にホンダのパワーユニットを搭載したマシンをできるだけ多く走らせて学ばないといけないことがたくさんありました」
「そのためには多少パフォーマンスに目をつぶっても、信頼性が高いほうがいいということで、コンサバな仕様をプレシーズンテストに持ち込み、開幕戦もほぼ同じ仕様で臨みました」