この5シーズンを通して圧倒的なパワーと高い耐久性を見せたメルセデスのパワーユニット(PU)。前回の技術解説では、その生みの親である人物がF1エンジンの飛躍的な進歩について語ったが、今回はパワーロスの防ぎ方や、2021年以降の新規則について明かした。
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今のF1パワーユニットは、壊れなければいいというものではない。シーズンを通じて、進化し続けなければならないのだ。
メルセデスのパワーユニットの生みの親であり、現在メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズ部門のマネージングディレクターを務めるアンディ・コーウェルは、次のように語った。
「シーズン中に1基を使い続けていると、どうしてもパワーが少しずつ低下していく。そこをいかに食い止めるか、エンジニアたちはずいぶん頑張ってくれた」
「かつてのV8エンジン時代は、まったく同じパーツを同じように組み立てたのに、どうしても個体差によるバラツキを防げなかった。それはなぜなのか、どこから起きるのか、徹底的に究明してね。まずはその個体差を、最小限にすることに成功した」
「次になぜ少しずつパワーが落ちていくのか、原因究明に取り掛かった。摩擦による表面の劣化や、ジョイントの劣化なのか、補機類に問題はないのか、かなりのエネルギーを追求に費やしたよ。具体的な部分には、言及できないけどね」
さらに組み上がってからのパワーユニットへの、細かな配慮も忘れない。
「次のグランプリへの移動に、高度1万メートルの上空を飛ぶことはしょっちゅうだ。その際、PUがどんな状態に置かれているか、しつこいほど確認している。精密機械の塊だからね」
1基あたりの寿命は、平均6000〜8000km。もちろん市販車エンジンとは比べものにならないほど短命だが、発生するパワーも違いすぎる。何よりモータースポーツの歴史において、これほどハイパワーかつ壊れないエンジンは、これまで出現していない。