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F1 ニュース

投稿日: 2019.01.04 11:00
更新日: 2018.12.28 18:20

【F1座談会企画(5)次期日本人F1ドライバー編】世界で苦労する日本人ドライバー。メーカーの垣根を越えたチャンスを

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F1 | 【F1座談会企画(5)次期日本人F1ドライバー編】世界で苦労する日本人ドライバー。メーカーの垣根を越えたチャンスを

 2018年は、F1を目指す日本人の若手ドライバーの名前が国内外を問わず、多方から聞こえたシーズンでした。残念ながら2019年の開幕戦のグリッドに日本人の名前が並ぶ可能性はなくなってしまいましたが、多くの人が次の日本人F1ドライバーの誕生を待ち望んでいるというのは事実。

 シーズンオフ企画の座談会もこれが最終回となりますが、最後は、オートスポーツwebでお馴染みのF1ジャーナリストの柴田久仁夫氏と、F1を16年に渡って全戦取材し続ける尾張正博氏が次世代の日本人F1ドライバーについて舌鋒を交わしました。これを読んだあなたは、日本人ドライバーやメーカーに対して、これまでとは違う視点が持てるのではないだろうか。

■福住、牧野、松下……F1を目指す3人の明暗を分けたホンダ内での争い

──(MC:オートスポーツweb)2019年も引き続きホンダのパワーユニットを使用するトロロッソですが、ドライバーラインアップが大きく変わります。ダニール・クビアトとアレクサンダー・アルボン(2018年FIA F2でランキング2位)という、一度はレッドブルを放出されたふたりのタッグになりますが、果たして今年以上の成績を残せるでしょうか。

柴田久仁夫氏(以下、柴田)「ドライバーとしてのパフォーマンスはふたりとも良いと思う。2018年(ピエール・ガスリー/ブレンドン・ハートレー)よりレベルが揃っているのではないでしょうか。アルボンはランド・ノリス(2019年にマクラーレンからデビュー)より速いと思いますね」

尾張正博氏(以下、尾張)「僕は、メルセデスに続いて第2のシーズン途中のドライバー交代がトロロッソにあると思う。もしガスリーがレッドブルでダメだったら、いくらでも代わりがいるということ。クビアトのパフォーマンスは問題ないんじゃない? 安全策だと思う」

──トロロッソのどちらかのシートを日本人が獲得することになれば……とも期待してしまうのですが。

柴田「2019年はないけれど、もし松下信治(2019年にF2に復帰)がスーパーライセンスを取得できれば、2020年の可能性は高まるよね」

──ところで、2018年は牧野任祐(ロシアンタイム)と福住仁嶺(BWTアーデン)のふたりがF2に参戦していました。改めて、彼らについての感想をお聞かせください。

柴田「福住に関してはチームが全然ダメだったというのもあるけれど、ダメなチームでそれなりの戦い方ができたとは思う……でも、メンタル面が厳しかったね」

尾張「ある人から聞いたんだけど、福住はチームの担当エンジニアから、フォーミュラカーのドライビングの基礎技術が書かれたミハエル・クルムの本を読むように勧められたんだってね」

柴田「福住本人が憮然としながら言ってきて、あれは衝撃だったなあ」

──それは、フォーミュラカーの基本的な走らせ方を理解していないという言葉の裏返しということですか? ドライバーとしては悔しいですね。福住はホンダの育成プログラムに沿ってステップアップして、その成果が認められて海外にチャレンジしているわけなのに。

尾張「担当エンジニアの意図は不明だけど、福住が『バカにされた』と思うのは当然だよね。そんなことされたら、いい人間関係なんて築けない」

柴田「牧野に関しては、客観的な分析がものすごくハイレベル。特にレースを振り返ってもらうと、その理論的なコメント内容に目から鱗が落ちまくり! ホンダの関係者も感心して聞いている。でもドライバーとして運転面での評価になると、典型的な日本人ドライバーの印象ですね。残念ながら競り合いに弱い」

表彰台中央に立つ牧野任祐

──その福住と牧野は、2019年は日本でレースをするという報道もありましたが、一方で松下がもう一度ヨーロッパへ挑戦します。彼らの違いはどういうところにあったのでしょうか。

柴田「松下と福住&牧野の明暗を分けたのは、ふたりがあくまでホンダの枠内で成績を出せばいいと思っていたこと。正直、2017年の段階で松下は終わったなと思っていたけれど、あそこまで復活したことには驚いたし、個人的には嬉しかった。初めてフランスに来た時から知っていたからね」

──彼らは第3戦バルセロナのレース2で接触し、ハロの有効性について大きな話題になりましたが、この一件で彼らの関係性に変化はありましたか?

柴田「あからさまに仲が悪くなったということはない。ただ我々から見れば、彼らのライバル関係はものすごく小さなもので、『井の中の蛙の戦い』という感じ。あくまでホンダの枠内での、という。でもそれじゃダメ」

尾張「マックス・フェルスタッペンはブラジルGPでエステバン・オコンと接触して、F1の勝利という大きなものを失った。もちろん荒れてはいたけれど、でもケロっとしているもんだよ。メディアに何かを言われたところで『自分は絶対に間違っていない』と言い張るし、彼はもうオコンのことなんか見ていない。アブダビGPではオコンが近づこうとした時に、ぶつかってもいいと思っていたようだった。同じような状況になったら普通は引くじゃない? でも彼は引かないし、そこが彼のすごいところ」

──第10戦モンツァのレース2では、牧野選手がF2初優勝を飾りましたね。福住選手はかなりショックを受けていたようですが……。

柴田「モンツァで牧野が勝ったことについて、福住はもちろん、落ち込んでいた。でもレース内容を見ても、牧野の優勝は棚ぼたのようなものだった。それを福住も十分わかっているはずなのに……牧野が勝ったという事実に圧倒されて自分の走りに自信が持てなくなってしまったんじゃないかな。でも、そこでもう少し考え直してほしかった」

■若手ドライバーにはメーカーの垣根を超えてチャンスを与えるべき


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