トロロッソ・ホンダのアレクサンダー・アルボンが本格的にF1マシンを走らせるのは、この日が初めてだった。本来なら2018年11月のアブダビテストで、記念すべきF1初体験を果たしていたはず。しかしすでに決まっていたフォーミュラEチームとの契約を解消するための交渉が長引き、残念ながら参加できなかった。
今回のバルセロナテスト直前にはイタリア・ミサノで新車のシェイクダウンを行ったが、それは文字通り転がす程度だった。それゆえこの日の緊張感は、今まで感じたことのないほど大きなものだったという。
コクピットに乗り込んだアルボンは、「いいか、アレックス。走り出していきなりのスピンだけは、絶対に避けるんだぞ」と、自分に言い聞かせたそうだ。ところがインスタレーションに出ていったまさにその周回で、アルボンは見事にスピンを喫してしまった。高速右コーナーのターン4を立ち上がろうとして、グラベルに飛び出したのだ。幸いマシンにダメージはほとんどなかったものの、ガレージに戻って来た直後はさすがにバツの悪そうな表情だった。
「路面が冷えきってて、まるで氷の上を走ってるみたいだった。こんな時にゆっくり走ると、よけいタイヤが冷えてしまう。それでスピードを乗せたんだけど、修正する間もなく挙動を乱してしまった」
それでもマシンのチェックを終えて走行を再開してからは、「すごく順調だった」とアルボンは言う。
「気温が上がるにつれて路面コンディションもよくなって、リズムに乗って走れるようになったんだ。ずっとスムーズだった」
その間、1、2度スピンしかけたが、それは新車の限界を探ろうとしたためで、マシンは十分にコントロール下にあったという。セッション終了間際にはソフト寄りのレッドコンパウンドで1分19秒301の自己ベストをマーク。132周を走って、総合4番手で初テストを終えた。
「(マシンが)重い状態での長いスティントも2回できた。チームも最終的には、僕の走りに満足してくれたんじゃないかな」