レッドブルがルノーからホンダにパワーユニット(PU/エンジン)を変えたことをメルセデスらライバル勢が警戒している理由の一つに、燃料と潤滑油を供給しているエクソンモービルをワークス体制で使用できるようになったことが考えられる。
2018年もレッドブルはエクソンモービルを使用していたが、パワーユニットはルノーで、ルノーのワークスチームが使用している燃料と潤滑油がBPカストロールであることを考えれば、理想的な関係でなかったことは容易に想像がつく。
F1の燃料は、市販燃料と同じ成分を含有しなければならない。FIAの規定には、オクタン価、酸素含有量、窒素含有量、比重が含まれている。しかし、成分の割合を変えること可能で、それによってアドバンテージを生み出すことはできる。
あるPUエンジニアによれば、「燃焼室、燃焼方法がパワーユニットによって違うように、燃料もそれに合わせて成分を調整するというのはF1では当たり前の話。それを行ったものとまったく行っていないのとでは、パワーユニットの性能が全然変わってくる」と言う。
つまり、パワーユニットをワークス体制で使用する場合は、燃料と潤滑油も併せてワークス体制で供給されることが、いまでは必要条件なのである。
したがって、ルノーPUからホンダPUに変更したことで馬力が超えたかどうかも重要だが、それよりもホンダPUに合わせた燃料と潤滑油がエクソンモービルから供給を受けられるようになったことも大きいだろう。今年のレッドブル・ホンダは、燃料面においても昨年のレッドブル・ルノーより万全の体制となっていると言える。
そのことは、メルセデスはペトロナスから、フェラーリはシェルから長年に渡って燃料と潤滑油の供給を受けていることからもわかる。燃料メーカーは、自らの研究所で燃料規定に沿って、使用するパワーユニットに適合した割合(エネルギー密度・オクタン価・バイオ材料)を研究している。
例えば、ノッキング(異常燃焼の一種)を発生させにくいように成分の配合を変えるといったことは、レギュレーションの範囲内でどのメーカーも行っている。特に直噴のターボが導入された2014年以降は圧縮比が増したため、ノッキングのリスクが高まったため、パワーユニットに合わせた燃料の調整は必須となっている。