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F1 ニュース

投稿日: 2019.04.11 13:30
更新日: 2019.04.11 15:00

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第2回】予選ペナルティの是非。アウトラップの『暗黙の了解』とハースF1の『意識の高まり』

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第2回】予選ペナルティの是非。アウトラップの『暗黙の了解』とハースF1の『意識の高まり』

 今シーズンで4年目を迎えるハースF1チームと、小松礼雄チーフエンジニア。第2戦バーレーンGPでは予選で好パフォーマンスを発揮するものの、スタート時のアクシデントやレースペースの不調も相まって入賞を逃す結果に。それでもその後のインシーズンテストでは、クルマの理解もいっそう深まったようだ。そんなレースウィークの模様とテストでの手応えを、小松エンジニアがお届けします。

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 バーレーンGP、予選はレッドブルに迫るタイムを出すことができてクルマはすごく良かったのですが、逆にレースでは全然ダメでした。その時は原因がきちんと把握できていなかったのですが、直後に行われた週明けのインシーズンテストでセットアップをいろいろ試した結果、何が悪かったのか掴めました。まずはバーレーンGPの金曜日から振り返りたいと思います。

 バーレーンGPのフリー走行1回目(FP1)と3回目(FP3)は、日中の走行になるので路面温度が高すぎ、夜に行われる予選やレースに向けてはあまり参考にならないセッションになります。FP1では、クルマのバランスがあまり良くなく、ドライバー2人ともあまり良い感触を持っていませんでした。しかし、これは路面温度が50度にもなるセッションでは予測されていたことなので、想定内ではありました。

 そして、フリー走行2回目(FP2)では走り出しからクルマのバランスも感触も良く、実際に予選タイヤを使っての一発のタイムもとても良かったです。しかし決勝に向けて燃料を積んで走り出すと、なかなか難しいクルマだということがすぐにわかりました。ラップタイムも良くなかったので、この段階で心配すべきことは日曜日の決勝レースのことだけでした。

 土曜日のFP3は、通常であれば予選の練習をするところですが、路面温度が高くてできることも限られていたので、レースのことだけを考えていろいろと実験をしました。興味深い結果を得られて、それをレースに生かせると思ったのですが、結果的にはそれでもレースペースは良くなりませんでした。

 予選ではロマン(グロージャン)がQ1で(ランド)ノリスのアタックを妨害したということで3グリッド降格ペナルティを科されましたが、あれはきちんと無線で伝えなかったレースエンジニアのミスでした。ロマンをコースに出すタイミングは良かったのですが、ノリスが随分後ろにいたから、追いつくことはないだろうと安心していたようです。もちろんノリスがアタック中だということはわかっていましたし、ロマンがバックストレートに入ったの時点ではまだロマンとノリスとの間に余裕がありました。

 ところが同じくアウトラップだった(セバスチャン)ベッテルはかなり飛ばしており(ロマンの後ろに来るまでにすでに3台追い抜いていました)、バックストレート後半でロマンを追い越しました。あの行為はよくなかったと思います。ドライバーの間ではお互いアウトラップの場合、『最終コーナーの手前で追い抜いてはいけない』という暗黙の了解があります。最終コーナーの前のストレートに入ったらお互いがアウトラップの場合、後ろのクルマは前のクルマを抜かず、ペースを落として間隔を開けるのが普通です。

 しかしベッテルはこの紳士協定を無視してロマンを最終コーナー前のストレートで抜きました。これによってロマンはベッテルとの間隔を作るために最終コーナー直前でペースを落さなければならなくなりました。そして後方から迫って来ているノリスに気づかず、最終コーナーでノリスを妨害してしまいました。

 もちろん、ウチのエンジニアが『後ろからノリスが来ている』とはっきりと伝えていれば問題ありませんでした。しかしエンジニアが何も言わなかったので、ロマンが最終コーナーでミラーを見て、後ろからアタック中のノリスが来たとわかった時には妨害してしまう形になってしまいました。

 ノリスのアタックを妨害してしまったので、3グリッド降格のペナルティは正しいことだと思います。しかし、ロマンにペナルティポイントを1ポイント科すという裁定には納得がいきません。今回の件は、チームの責任でドライバーが原因ではないからです。たとえばピットアウト時に『アンセーフリリース』があったとしても、ドライバーにペナルティポイントを科すことはありません。それと同じことですので、今回のF1スチュワードの裁定には一貫性が欠けていると思っています。

■決勝レースで確認できたハースF1のウイークポイントと高まるチームの一体感


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