セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の優勝争いの可能性は、スタート直後のターン1で早くも潰えてしまった。4速で曲がる高速のコーナーへ向けて、ポールシッターのバルテリ・ボッタス(メルセデス)に並びかけてターンイン。しかしベッテルの右フロントタイヤからは派手な白煙が上がり、ベッテルはたまらず姿勢を崩す。
ベッテル:右フロントに酷いフラットスポットができてしまった!
メルセデスAMGの2台に次ぐ3番手にはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が上がり、抜けないバルセロナでのレース序盤の序列は固まってしまった。
レッドブル:OK、左リヤをケアすることに集中していけ。ここから落ち着いていけ。リフトオフもしろ。後ろはベッテル、その後ろはルクレールだ
各車が間隔を開けてタイヤを労りながら周回を進める。
レッドブル:ベッテルは2秒後方になった。タイヤを守るためにボッタスとのギャップを考えろ。マシンバランスは安定している。ターン3、4、9でも良い仕事ができているよ
1周目にできたフラットスポットによりペースが上げられないベッテルに対し、10周目にもなると5番手ルクレールが背後に迫ってポジション変更を要求する。そしてフェラーリはすぐにチームオーダーを発令することなく迷いを見せてしまう。ここ数戦に渡って何度も目にしてきた光景が、スペインでも繰り返されてしまった。
フェラーリ:ルクレールが0.8秒後方でDRS圏内。もっとプッシュする必要がある。フェルスタッペンのペースは22.9だ
なんとかペースを上げようとするベッテルだがそれもならず、13周目にはついに自らポジションを明け渡すとチームに伝えた。
ベッテル:バイブレーションが出ていてこれ以上プッシュできない。このままじゃ2台ともロスしている。次のストレートで彼を行かせるから伝えてくれ。僕はできるだけ早くピットインしたい。この後がどうなるにしても、このタイヤで走り続けるよりマシだ
タイヤの振動に苦しみ早くタイヤ交換をするべきだと訴えるベッテルに対し、フェラーリは中団グループの真っ只中にコース復帰することを嫌ってベッテルをいつまでも走らせ続けてしまった。
ベッテル:(ピットインに必要な)ギャップはできた?
フェラーリ:まだだ
ベッテル:トラフィックは関係ない。ピットインさせてくれ
17周目にそう言ったベッテルは翌18周目にも繰り返しチームに要求。19周目になってようやくピットインが許された。
ベッテル:できるときにピットインさせてくれ
フェラーリ:OK、OK
これを受けて3番手フェルスタッペンもピットインしベッテルの前で戻ってアンダーカットを阻止。しかしこちらは再びソフトタイヤを装着し、この時点で2ストップ作戦に出たことをはっきりと周囲にアピールする。ステイアウトするルクレールの動向も気にしながら走行し、25周目にピットインしたルクレールの前をキープする。
レッドブル:まだピットインしていないルクレールが23.5。左リヤに気をつけて走れ