今年もライバルたちを圧倒しているメルセデス。その最大の理由は、彼らが最高のマシンに最強のエンジンを有しているからにほかならないが、それを可能にしているのは、チームが目標に向かってしっかりと団結しているからにほかならない。だから、チーム内の雰囲気がとてもいい。それはメルセデスを取材していると、よく感じる。
F1第5戦スペインGPのレース直後に開かれたトト・ウォルフ(メルセデス・ベンツ・モータースポーツ責任者)の記者会見は、メルセデスがいかに風通しのいいチームであるかを感じさせるものだった。
会見の途中で、メルセデスのエンジン責任者を務めるアンディ・コーウェルがサーキットを去る前に、ウォルフにあいさつに来たのだが、会見中ということで会見場の後ろで待っていた。すると、それに気づいたウォルフが会見を中断して、コーウェルへ歩み寄って抱き合い、開幕5連勝の喜びを分かち合った。
このとき、筆者はちょうど目の前にいたのだが、ウォルフが「バッテリーは問題なかったよ」と笑いながらコーウェルにささやいていたのを聞き逃さなかった。じつは、前日の予選でメルセデスは、ルイス・ハミルトンがバッテリーを十分に充電することができず、最大限のパフォーマンスを発揮できずに2番手に終わるという、小さな問題に見舞われていた。
もちろん、これはハードウェアに問題があったわけではなく、ハミルトンがアウトラップで渋滞に引っかかったために起きた問題なのだが、そういった困難もジョークで笑い飛ばせるほどの信頼関係を築いているあたりにメルセデスの強さを感じた。