ホンダのモナコGPをひと言で評するなら、「煮え切らない結果」であった。
今季からレッドブルとトロロッソの2チーム4台にパワーユニットを供給するホンダは、開幕6戦目にして全車入賞を果たした。これは1987年イギリスGP以来、32年ぶりの快挙だ。それ以上に素晴らしかったのが、レース序盤、11周目にピットストップで2番手に上がったマックス・フェルスタッペンが王者ルイス・ハミルトンをチェッカーまで延々70周近くも追い回したことだった。
ほとんどオーバーテイク不可能と言われるモナコで、首位を奪うことは難しい。フェルスタッペンも抜くまでには至らなかったが、レース後の会見で終始追われ続けたハミルトンは「自分のキャリアで、最も厳しいレースだった」と振り返った。メルセデスが開幕から6連勝を飾るなか、レッドブル・ホンダがここまで彼らを苦しめたのは今回が初めてだった。
にもかかわらず「煮え切らない結果」と評するのは、フェルスタッペンが序盤に5秒加算ペナルティを受けており、2位でチェッカーを受けたものの最終結果は4位に終わったからである。今シーズンの開幕前から、モナコをホンダ初勝利の最大のチャンスと捉えていた山本雅史ホンダF1マネージングディレクターも、「たとえ勝てなくても、2位表彰台なら気持ちよくモナコから帰れていたでしょう」と“煮え切らない”表情をしていた。
それは田辺豊治F1テクニカルディレクターも同様で、「予選と今日の結果を見れば、表彰台を狙えたことは明らか」としつつ、メルセデス2台に割って入れたかどうかは「分かりません」と答えている。
去年のレッドブルはモナコで圧倒的な速さを見せ、ダニエル・リカルドが勝利を飾った。しかし、その強さを再現できなかった一番の要因は、今季のRB15の車体性能が最優秀とは言えないからである。それでも今季ワン・ツー勝利を続けてきたメルセデスに対しここまで善戦できたのは、パワーユニット性能の優劣が勝敗に直結しない、いわゆるパワー感度の低いモナコだったからだ。
とはいえレース後のフェルスタッペンはホンダに対しても、「メルセデスやフェラーリのレベルにはない」とコメントしていた。彼の言いたいことは明らかで、最大の抜きどころであるシケインで仕掛けるには、そこに至るトンネル内でどこまで接近できるかにある。しかしヘアピンで接触するほどハミルトンに近づいていたにもかかわらずポルティエコーナーからの立ち上がりで常に引き離されていた。そのためシケインのブレーキングで仕掛けるチャンスは、ほとんど訪れなかったのだ。
今季のレッドブル・ホンダは車体とパワーユニットの非力を、フェルスタッペンの孤軍奮闘で何とか救っているという構図は、あまりに皮肉過ぎる見方だろうか。しかしフェルスタッペンのマネジャー役も担う父ヨスは、その辺りの力関係に充分に意識的だ。
最近メルセデスのトト・ウォルフと交渉を始めたと報じられ、トトが全面否定した。しかしそれは事実であったと、考えるほうが自然だ。もちろんフェラーリとも、接触しているはずである。レッドブル・ホンダとの契約は、来年末まで残っている。しかし勝てないと見切りをつければ、素早く行動に移すことだろう。