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F1 ニュース

投稿日: 2019.06.20 11:30
更新日: 2019.06.20 11:59

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第7回】ドライバー心理が垣間見えたマグヌッセンの暴言と、謝罪を受け入れたチームのケア

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第7回】ドライバー心理が垣間見えたマグヌッセンの暴言と、謝罪を受け入れたチームのケア

 今シーズンで4年目を迎えるハースF1チームと小松礼雄チーフエンジニア。第7戦カナダGPでは、ケビン・マグヌッセンとチーム代表との無線が大きな話題となった。今回は、ミスをしたドライバーへのケアの方法や、チーム代表の知られざる人となりを小松エンジニアがお届けします。

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 第7戦カナダGPは、前戦モナコGPで機能させられたタイヤを、ダウンフォースを削った状態でうまく使えるかどうかがカギになると予想していました。結果としては、予選でのペースはほぼ予想どおりでした。ケビン(マグヌッセン)はもし予選Q2でクラッシュしていなければ、確実にQ3に進出できていたはずでした。もちろんQ3でどれくらいやれたのかというのは確実にはわかりませんが、ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)と争える位置にはいけたのではないかと思います。

 一方でチームメイトのロマン(グロージャン)は、金曜日の出だしからあまり調子がよくなかったので、フリー走行2回目終了後の夕方にいろいろと話をしました。彼はクルマのことだけでなく、自分自身のことやその時の状況などを考えて、細かく分析するタイプのドライバーですが、それが彼にとって悪い方へいってしまうこともあるので、その様な時は悪い循環を断ち切ってやらないといけません。

 ロマンとは付き合いも長く、何が彼を悩ませているのかというのを大体はわかっているつもりなので、話し合って「リセットしよう」と伝えました。彼の場合は、このような会話を通してスイッチを入れ直せることがあるんです。

2019年F1第7戦カナダGP ロマン・グロージャン(ハース)
2019年F1第7戦カナダGP ロマン・グロージャン(ハース)

 おかげで、土曜日のフリー走行3回目(FP3)では走り出しからよくやってくれましたが、最終コーナーの立ち上がりで壁に当たってリヤウイングを壊してしまいました。その後ウイングの交換に時間がかかったこともあり、FP3ではソフトタイヤを履いて予選の練習をすることができませんでした。これが後に予選でひびいてきます。

 ジル・ビルヌーブ・サーキットは、普段はあまり使われていないので、Q1の出だしは路面コンディションが悪くてラップタイムも遅いです。なんとかふたりともQ1を通過しましたが、Q2ではロマンが1回目のアタックを失敗し、2回目もそこまで良いタイムには届きそうにありませんでした。最終的にはケビンのクラッシュにより赤旗が出たため、タイムを計測できずに15番手となりましたが、きちんと走れていたとしても1分11秒8くらいのタイムだったと思いますし、Q3には進めなかったと思います。

 一方でQ2終了間際に大きなクラッシュを喫したケビンですが、幸い彼の身体へのダメージはありませんでしたが、クルマの修復作業は大変でした。日曜日の午前3時くらいまで作業をしていましたが、本来は土曜日の深夜帯の作業というのは許されていません。

2019年F1第7戦カナダGP ケビン・マグヌッセン(ハース)
2019年F1第7戦カナダGP ケビン・マグヌッセン(ハース)

 通常の場合、予選が終わった3時間半後にはパルクフェルメでクルマにカバーがかけられて、日曜日の決勝レースのスタート5時間前まで作業ができないことになっています。ちなみに、この規則を破った場合のペナルティというのはレギュレーションに明記されていませんし、前例もちょっと思い当たりません。

 過去にある例は、シャシー交換を行ってピットレーンからのスタートとなった場合くらいです。シャシー交換をすれば、規則で自動的にピットレーンスタートになります。交換作業にはかなり時間がかかるので、これもほぼ自動的に規則外の時間で作業をすることになりますが、すでにシャシー交換でピットレーンスタートとなっているので、それ以外のペナルティーは発生しません。

 またこの機会を使って通常は許されていない予選後のセットアップの変更も行いました。というのもただ最後尾から走って順位を上げることは難しいので、最高速重視のセットアップにしました。これは、ある程度のギャンブルです。たとえダウンフォースを削ったとしても、もしタイヤがうまく機能しなければ、コーナーの立ち上がりが悪くなり、結局は追い抜くことが出来なくなるからです。

 良い方向に向かうことを願うしかなかったのですが、最終的にダウンフォースを削ったセットアップで臨んだ決勝レースでは、路面温度が52度まで上がってリヤタイヤにも影響が出てしまい、その目論見は外れてしまいました。結果としてケビンは17位で、ロマンはスタート直後にダメージを負ったこともあって14位でそれぞれレースを終えました。

■マグヌッセンの暴言と謝罪の裏側にあるドライバー心理


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