2021年以降のブラジルGP開催地をめぐる争いがますます熱を帯びてきた。
1990年以来同GPを開催しているインテルラゴスからそのポジションを奪い取ろうと企てているのは、2016年に夏のオリンピックが開かれたリオデジャネイロだ。モナコGP期間中に、これから建設予定のサーキットの代表がプランを発表した。
インテルラゴスにとって、これは打撃となる。バーニー・エクレストンと、地元のプロモーターであるタマス・ロホニとの間には、2020年末までの契約延長を保証するために特別な取り決めが取り交わされており、現状ではサーキットの大幅な改修が求められているが、そのための約4000万ドルという資金を、ブラジル政府が負担しているという状況だ。
「我々はサンパウロと良好な関係を築いているが、2021年をどうするのか、決めなければならない」と、F1のCEOを務めるチェイス・キャリーは明かした。
「我々は両者と交渉しており、関心を寄せてもらえることをうれしく思う。ブラジルは我々にとって大切なマーケットであり、ビジネス面でも欠かせない重要な地域のひとつだ。引き続き彼らとの交渉を進めていくつもりだが、どのような結果を導き出せるのか、楽しみだ」
リバティメディアはブラジルGPの契約更新を望んでいるが、自分たちに有利な契約を取り付けることを条件に掲げており、年間2500万~3000万ドルというレース開催費用を請求している。
2018~20年の3年間はレース開催費用は免除されている状況のサンパウロにとっては、この金額を負担することは難しそうだ。そこに、リオのオーガナイザーはチャンスを見出した。
アイルトン・セナ・サーキットと名付けられる新サーキットは、公の入札を経てあるコンソーシアムに35年間の権利を与えた軍用地に建設される予定だ。環境問題など、解決すべき事項がいくつかあり、建設着工に遅れが出ることも考えられるが、プロモーターのJRペレイラは「4カ月後には作業をスタートさせ、18カ月で完成させることができると考えている」と語った。
全長4.4kmの新しいサーキットのデザインを手がけたのはヘルマン・ティルケだ。もともと二輪レースを想定して設計していたため、レイアウトを見直す必要があったというが、「このコースは程よい高低差があり、レースには最適だと思う」と、このプロジェクトにかなり乗り気だ。
1930年代に作られたインテルラゴスはその後、サンパウロという都市の成長に飲み込まれ、サーキットの規模を拡大することができなかったのだが、この新サーキットにはインテルラゴスにはないファンのためのスペースやより大規模なパドッククラブといった設備も充実している。
計画段階では、このプロジェクトは非常に魅力的に思えるが、1億8500万ドルと見積もられるサーキット建設費用に加えて、毎年のF1開催費用を誰が負担するのかという点が明確になっていない。
ペレイラによると、公的資金を投入するつもりはないようだ。何を根拠にサーキット建設とGP開催が実現すると確信しているのかと尋ねると、彼が過去に関わっていた防衛産業関連のプロジェクトでは、「常に成功してきた」ため不安はないのだという。なお、彼がモータースポーツ業界で仕事をするのは今回が初めてだ。
サンパウロのブルーノ・コヴァス市長は、理想を言えば、レース開催を継続するために公的資金を投入したくないのだが、サンパウロにとって、ブラジルGPの開催は観光関連などで7500万ドルもの収入が見込まれる、1年で最大のイベントであることは認識していると語っていた。
どこでGPが開催されるにせよ、世界中の視聴者の約20%を占めるブラジルでのF1開催を継続させたいというのがキャリーの意向だ。
「ブラジルは非常に重要なマーケットであり、数字上でも満足できる結果が得られ、また、素晴らしいレースが繰り広げられる場所だ。そのため、我々としてはぜひともブラジルでのレース開催を維持していきたい。2021年以降に向けて、ベストな結論を導き出すことが課題だ」