ホンダは第8戦フランスGPに3人のドライバーに『スペック3』のパワーユニット(PU/エンジン)を投入したのに続いて、第9戦オーストリアGPでは、アレクサンダー・アルボン(トロロッソ)にも投入することを発表した。これでホンダがパワーユニットを供給する4人全員にスペック3が投入されることになる。
このスペック3はHRD Sakura(栃木県の本田技術研究所)だけでなく、埼玉県和光市の航空機エンジンR&Dセンターにある航空エンジン研究開発部門が有する知見と技術が入っている。
F1第8戦フランスGPには、2018年の1月からHRD Sakuraのセンター長としてF1のパワーユニットの開発を率いている浅木泰昭氏が訪れていた。その浅木センター長に航空エンジン研究開発部門との協力関係について聞いた。
――どのような経緯でHRD Sakuraがほかの部署と一緒に仕事することになったのでしょうか?
浅木泰昭センター長(以下、浅木センター長):私が2017年の夏にHRD Sakuraに赴任したときに、すでに本田技術研究所の松本宣之社長(2019年6月開催予定の定時株主総会後に退任予定)を中心に、「これからのF1は、HRD Sakuraの数百人のメンバーだけでなく、ホンダのすべての研究所から、必要な人材と知見を持ち寄って戦おう」ということで意思の統一なされていました。私や田辺豊治(F1テクニカルディレクター)がHRD Sakuraに来たのも、その一環だったと思います。
――その中で、航空エンジン研究開発部門を選んだのはなぜでしょう?
浅木センター長:なぜかというと、当時われわれはMGU-H(Motor Generator Unit-Heat:エンジンの熱を電気エネルギーに変換し、エンジンパワーにするもの)の信頼性に苦しんでおり、航空エンジン研究開発部門が技術的に近い知見を持っていたからです。
航空エンジン研究開発部門は埼玉県和光市にあるのですが、正直に現状を報告し、助けてもらうことにしました。ジェットエンジンにもターボがあり、シャフト、軸受があり、技術的に非常に近いからです。